KDDI研究所は2月22日、ウインドリバーと日本ヒューレット・パッカード、ブロケード コミュニケーションズ システムズ(ブロケード)と共同でネットワーク仮想化時代に向けて人工知能を活用した自動運用システムを開発し、人工知能による故障予測に基づきネットワークを自動運用する実証に成功したと発表した。なお、同実証に成功したのは世界初だという。
今回の実証では、ソフトウェアバグなどの異常の兆候を9割以上の精度で事前に検知し、従来の約5倍の速度で仮想化された機能を別拠点などの安全な場所へ移行することに成功している。
具体的には、共通的なネットワーク仮想化基盤にハードウェアやソフトウェアの深刻な障害の兆候を検知する人工知能を埋め込み、効率的に学習、状況判断するとともに、予兆結果に基づいてSDN/NFVオーケストレータが最適な復旧プランを導出し、仮想化された機能を瞬時に移行させる自動運用システムの実証を行った。
成果として設備警報などで検知可能な異常だけでなく、一旦発生すると深刻な事態を引き起こす恐れのある事象にも対応可能となり、ネットワーク仮想化時代の運用高度化の実現が期待されるという。以下は実証実験の概要ならびに技術的ポイント。
共通仮想化基盤に分散的に埋め込まれた人工知能が汎用サーバや仮想化された機能など、ハードウェアとソフトウェアの両面で異常な兆候がないか、学習、検知する。この結果、そのまま放置すると深刻な事態につながる恐れのある兆候を捉える。なお、精度の高い学習と分析には膨大な統計量の処理が必要になるため、人工知能を分散させるというアプローチを取っている。
上記で捉えた兆候などの情報を統合管理制御システムに集約し、その情報に基づきSDN/NFVオーケストレータは最適な復旧プランを導出。例えばソフトウェア異常(例:バグに起因するメモリ漏洩)を放置すると突然機能が停止する恐れがあるため、停止する前に代替機能でサービスを継続させる。また、ハードウェア異常(例:冷却ファン劣化によるサーバの放熱異常)の影響を考慮して、該当する仮想化された機能を別拠点などへ移行させる。
上記の復旧プランに基づき、実際の復旧作業を自動的に進める中で、特にハードウエアなどの設備に起因した異常に対しては、影響を受けるサービスの範囲が大きくなる。その様な場合、該当する仮想化された機能の数も非常に大きくなり、それらをサービスに影響を与えずに移行させるかが課題となる。そこで、高速移行技術で影響を最小限に留めながらリスクを回避する。
各社の役割としてKDDI研究所は人工知能による監視システム、SDN/NFVオーケストレータ、仮想化された機能、ウインドリバーはキャリアグレード仮想化基盤ソフトウェア、高速移行技術、日本ヒューレット・パッカードは仮想化された機能、ブロケードは仮想化された機能(Brocade vRouter製品)をそれぞれ担当。
KDDI研究所は、ネットワーク仮想化への取り組みを通じて、IoT/M2Mなど多様化するサービスへの柔軟な対応と、より複雑化する運用の簡素化を図り、第5世代移動通信システム(5G)ネットワークの実現を目指す。
また、NFV/SDN運用システム技術はTMForumやETSIなどの標準化団体を通じて、共通仮想化基盤における人工知能活用はOPNFVやOpenStackなどのオープン実装団体を通じて、ネットワーク仮想化によるインフラ基盤の高度化に貢献していくという。