フォーティネットジャパンは2月18日、2016年の事業戦略説明会を開催した。説明会では、初めに、社長執行役員の久保田則夫氏が2015年のビジネス概況、2016年の事業戦略の概要を説明した。
久保田氏は、2015年はグローバルでかねてからの目標であった10億ドルの売上高を達成し、国内ではIDC Japanの調査で第3四半期に国内セキュリティ機器市場で売上額、出荷台数ともにシェア首位を獲得したとして、好調ぶりをアピールした。国内で業績が伸びた理由としては、年金機構の情報漏洩事件とマイナンバー制度の開始が挙げられた。
加えて、久保田氏は2015年のトピックとして、FortiGuard Labsの国内開設を紹介した。国内のFortiGuard Labsには日本人の研究者が1人在籍しており、日本特有の脅威を踏まえ、早期にアラートを発信していきたいという。
もう1つ忘れてはならないのが、メルー・ネットワークスの買収だ。昨年に買収を発表し、2016年1月より統合が完了した。これにより、「無線LANベンダーであるメルーの技術を吸収し、"Secuerd Wi-Fi"を提供できる企業として活動していきたい」と久保田氏。ソリューションに加え、パートナーの幅も広がり、ビジネスの拡大が見込めるようだ。
2016年のトピックとしては、日本がリージョンとして独立することが紹介された。一般に、外資系ベンダーの日本オフィスは、アジア・パシフィックの一組織として位置づけられることが多い。これに対し、同社は「日本」という1国で独立したリージョンを担っていくことになる。
この背景について、久保田氏は「ヘッドクォーターがローカルの戦略をすべて策定するとうまくいかない。事業を成功させるには、リージョンとしての施策を講じる必要がある。CEOのケン・ジーからも自分たちで考えて行動するよう言われている」と語った。
加えて、SMB向け製品に強いベンダーとしてのイメージを脱却し、今年はあらゆる規模の企業・組織をカバーする包括的なソリューションを提供する総合セキュリティ・ベンダーとしての地位を確立すべく、さまざまな施策を打っていくという。
まず、久保田氏は「サービスは重要なテーマ」と前置きしたうえで、提供予定のサービスを紹介した。FortiSandboxに関わる運用サービス(2016年4月以降予定)、セキュリティ診断プログラムの提供が予定されている。
セキュリティ診断プログラムは、顧客の環境におけるセキュリティリスクの把握、アプリケーション利用状況の可視化を行い、セキュリティ対策の検討材料としてもらうことを目的としている。
また、パートナーサポートの拡充も予定されている。これまでは3つのプログラムで運用していたところ、新たにグローバルパートナーのプログラムを増やすなど、5つのプログラムに増える。国内のパートナーは2016年4月より新たなプログラムに移行する。
NSE(Fortinet Network Security Expert)認定資格プログラムも強化され、日本語によるトレーニングが開始される。今回、従来の認定資格から「NSE4」に移行する。
製品・マーケティング戦略の詳細については、副社長兼マーケティング本部長 西澤伸樹氏が説明を行った。
西澤氏によると、グローバルで「エンタープライズ・ファイアウォール」「コネクテッドUTM」「標的型攻撃対策」「セキュア無線LAN」「データセンター・セキュリティ」「クラウド・セキュリティ」の6つのソリューションについて注力していく構えだという。
エンタープライズ・ファイアウォールとは、複数の製品を適材適所で導入して、防御することを意味する。同社としては幅広い選択肢があることを訴えていく。
エンタープライズ・ファイアウォールを推進していくにあたっては、「ISFW(内部セグメンテーション・ファイアウォール)」というコンセプトを展開する。ISFWでは、企業内のネットワークをセグメントに分割して、各セグメントにノードを置いて監視する。そのため、内部セグメントを可視化して、防御することが可能になるという。
米国で1月に発表されたFortiGateのオペレーティングシステム最新版「FortiOS 5.4」には、ISFWを実現する機能が搭載されている。
西澤氏によると、FortiGateのEモデルから、これまで技術仕様として公表していなかった「SSLインスペクションスループット」と「NGFWスループット」(IPS、アプリケーション制御、アンチウイルスのスループット)が追加されるとのことだ。
市場でのシェア獲得に加え、メルー買収による製品ポートフォリオ拡大と、ビジネス拡大に向けて好条件がそろうフォーティネットジャパン。久保田社長も言うように、ネットワークセキュリティ・ベンダーとしての認知度向上が今後の成功のカギとなるだろう。