意思を持つ武器「ブブキ」と謎の人型巨大生命体「ブランキ」を中心に展開される重厚なSFファンタジーアニメ『ブブキ・ブランキ』。3DCGを用いた制作を得意とするアニメスタジオ「サンジゲン」の設立10周年を記念したオリジナルTVアニメが話題を呼んでいる。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』の副監督や、『キルラキル』の演出などを手がけた小松田大全氏を監督に起用し、キャラクターデザインをコザキユースケ氏、シリーズ構成・脚本をイシイジロウ氏、北島行徳氏が手がけるなど制作陣の豪華さにも目がいくが、特筆すべきはフルCGにも関わらずセル画のような感覚で違和感なく鑑賞できる「セルルック」技術の高さだ。
そこにはいったいどんな技術が使われているのか。そして、CGアニメとデジタル作画は日本のアニメ業界をどう変えていくのか。サンジゲン代表の松浦裕暁氏に聞いた。
「CGっぽい」とはどういうことなのか
――本日はよろしくお願いします。まずは『ブブキ・ブランキ』のお話から聞かせてください。本作はフルCGでありながら、セル画に見える表現、いわゆる「セルルック」で制作された作品ですよね。見ていてCGっぽさを感じなかったので驚きました。そこでふと疑問に思ったのですが、私たちがアニメのCGから感じる「CGっぽさ」というのは何なのでしょうか。
松浦:「CGっぽさ」というのは、子どもの頃から僕たちが刷り込まれてきた日本のアニメとの違いからくる違和感です。具体的にいうと、まずは「形」。CGでいうモデリングですね。セルアニメでは一枚一枚を手描きで作っていくため、完璧に同じ絵は二度と描けません。
しかし、CGではすべてのカットに同じモデリングが使えて、ポンっとボタンを押せばつねに同じキャラクターが出せます。形としてはCGの方が正確なはずなのですが、僕たちは一枚一枚異なる形の絵を何枚も重ねて表現している日本のアニメに慣れ親しんできたので、CGの方がおかしいと感じるのです。
――なるほど。背景がCGでもそれほど違和感がないのに、キャラクターには違和感を覚えるのはそういうわけですか。
松浦:もう一つの理由は「動き」です。日本のアニメは1秒間に24コマで絵を動かしているのですが、手描きの場合、そこまで秒間のコマ数は増やしておらず、実際には1秒間に8コマくらいで描かれています。ところが、CGではコンピュータで計算して動きをつけられるので、ボタンを押せば1秒24コマの絵がすぐにできるのです。この動きのなめらかさが「CGっぽさ」を生んでいるのです。
――これも面白いですね。本来であれば、1秒間に24コマでぬるぬる動く方が映像表現としてはリッチといえるわけですが、私たちは日本のアニメで8コマ/秒の動きに慣れてしまっているわけですね。
松浦:そうです。だから日本のアニメ以外、たとえばディズニーなんかだとぬるぬる動いても違和感はないですよね。それはディズニーがそういう文化を作ることに成功しているからです。本当は日本もディズニーのようにしたかったのでしょうけど、コストや人手不足などいろいろな問題で8コマ/秒が定着したのでしょう。
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