日本IBMは2月17日、都内で記者会見を開催し、ミッドレンジメインフレーム「IBM z13s」(以下、z13s)を発表した。3月10日の出荷開始を予定している。
z13sは従来機(zBC12)比8倍となる最大4TBのメモリを搭載でき、データベース処理専用エンジン「zIIP」が同時マルチスレッド(SMT)に対応。これにより、例えばApache SparkやCloudantを活用して、さまざまな種類のデータベースに格納されている顧客情報、購買履歴、株売買履歴とSNSデータや位置情報をリアルタイムに分析し、おすすめの金融商品を提示するといった分析を、メインフレーム外部へデータを移動せずに処理するという。
さらに、z Systemsはハードウェアで暗号鍵を保持するセキュリティを有しており、z13sは暗号化の機能を強化し、暗号化と復号化を従来機(zBC12)比2倍に高速化。加えて、z/OSでIBM Multi-factor Authentication for z/OS(MFA)による多要素認証が利用できるようになる。
そのほか、多要素認証を追加することで特権ユーザーがシステムにアクセスする場合、PINやランダムに生成されるトークンなどの入力が必要となり、セキュリティをさらに高めることが可能だ。今回、初めて多要素認証がアドオンのソフトウェアではなくOSに緊密に統合されたことで、設定の効率化、安定性、パフォーマンスを実現しているという。
また、企業が監視を自動化し、ヒューマンエラーを排除するためメインフレームをIBMセキュリティーの特権ID管理や機密データの保護、統合的セキュリティ・インテリジェンスといったソリューションとの統合を進めている。
日本IBM IBMシステムズ・ハードウェア事業本部 IBM z System エバンジェリストの鮫島範行氏は、z13sで活用されている新しいテクノロジーについて「SMC-D(Shered Memory Communications-Direct Memory)とzACI(z Appliance Container Infrastructure)、Dynamic Partition Managerの3つがある。SMC-Dは筐体内の高速通信を提供する機能として、従来のTCP/IPベースの通信などと比べ、筐体内での通信パフォーマンスを向上させた。また、パーティションモード上でソフトウェアアプライアンスを稼動させるzACIは、さまざまな機能をソフトウェアアプライアンスで提供していく。そして、Dynamic Partition Managerはz Systemsの構成管理をGUIの画面で実行する機能だ。これまでz Systemsの環境においてはディスクの定義などをする際にテキストベースの定義ファイルの作成が必要だったが、GUI画面でI/O定義が可能となったため画面を見ながら数クリックで容易にディスクの定義ができるほか、Linux環境でも同様に行える」と強調した。
日本IBM 理事 IBMシステムズ・ハードウェア事業本部ハイエンド・システム事業部長の朝海孝氏は「デジタル変革の中でz13sの強みは基幹データを中核としたAPIエコノミー、オープンなハイブリッドクラウド基盤、基幹データとビッグデータを融合したリアルタイム分析の3つだ」と述べた。
APIエコノミーは、API提供者(企業)がデジタル化された情報資産をAPIとして公開し、API利用者が公開されたAPIを活用して、付加価値を高める新たなサービスを開発し提供することで生み出されるビジネス商圏。
今後、企業の組織変革やエコシステムの構築、製品やサービスの収益化の原動力になると考えており、z13sは企業がAPIエコノミーを最大限に活かすために、メインフレーム上にある基幹データをセキュアにモバイル・アプリなどの外部サービスと連携させることができるとしている。
朝海氏はz13sを軸とした販売戦略について「ハイブリッドクラウドショーケースの開発と実践、リアルタイムアナリティクスとAPIエコノミーをインダストリソリューションに同化し、ソリューションインテグレーションを加速する。また、Linuxを1つのブランドとして位置づけ、Linux専門の営業部隊を設立し、Linux on z SystemsとLinux on Powerを同じ組織で担当する」と今後の営業活動への意気込みを語った。