欧州の航空宇宙大手エアバスは2月9日(現地時間)、開発中の旅客機「A321neo」の初飛行に成功した。A321neoは、世界的なベスト・セラーとなっている従来型のA321からエンジンを改良し、燃費の大幅な向上を図った機体で、今年末から顧客への量産機の引き渡しが始まる予定となっている。
A321neoの試作機(国籍記号D-AVXB)は、2月9日にドイツのハンブルク空港を離陸し、上空を5時間29分にわたり飛行した。飛行中にはエンジン・スピードを変える試験や、システムの挙動、フライト・エンヴェロープ(飛行包絡線)の評価などが実施された。今後も、NEOシリーズの飛行試験機隊に加わり、操縦特性や性能、システムの検証を行うための飛行試験が実施されることになっている。
A321neoは、エアバスのA320neoファミリーの中で最も大きな機体で、新しいエンジンと、「シャークレット」と呼ばれる翼端の小さな翼(ウィングレット)、客室の改良などで、2020年までに現行のA320と比べ、燃費を20%向上させることを目指している。またA321neoには燃料の搭載量を増やし、航続距離を延ばしたA321neoLR (Long Range)という派生型も開発されることになっており、これにより大西洋横断など長距離を飛ぶ路線への投入も可能となる。
A320neoファミリーのエンジンは、米仏CFMインターナショナル製の「LEAP-1A」と、米プラット&ホイットニー製の「PW1100G-JM」の2種類から選択できるようになっており、今回初飛行したA321neoの試作機にはLEAP-1Aが搭載されていた。PW1100G-JM搭載機も3月ごろに初飛行を行うことになっている。
エアバスによると、今年1月現在、A321neoは米国のアメリカン航空やハンガリーのウィズエアーなどから、合計1101機の発注を受けている。また日本のANAも26機を発注している。
A321neoの顧客への引き渡しは、今年末から始まる予定となっている。
A320neoファミリーのエンジンは、米仏CFMインターナショナル製の「LEAP-1A」と、米プラット&ホイットニー製の「PW1100G-JM」の2種類から選択できるようになっており、今回初飛行したA321neoの試作機にはLEAP-1Aが搭載されていた。 (C) Airbus |
初飛行に向けてタキシングするA321neo (C) Airbus |
A320neoファミリー
エアバスのA320は、中・短距離路線向けの旅客機として開発された機体で、1987年に初飛行し、1988年から運用が始まった。現在までに約6900機が生産され、世界的なベスト・セラー機となっている。
A320が開発された後、さまざまな市場の要求に応えるため、胴体を伸ばして座席数を増やした派生型のA321(最大約240席)が開発された。またその後、胴体を縮めて座席数を減らしたA319や、さらに減らしたA318も開発されている。
そして2010年12月に、エアバスはエンジンを新しいものに換装するなどし、燃費・航続距離を向上させる「A320neo」(New Engine Option)の開発を発表。さらにA319、A321に同様の改良を施したA319neo、A321neoの開発も発表された。A320neoシリーズの登場により、現行型のA320はceo (Current Engine Option)と呼ばれるようになった。
A320neoは2015年9月25日に初飛行し、現在までに飛行回数は640回を超え、飛行時間は1900時間に達している。すでに量産1号機は今年1月20日に、ルフトハンザ・ドイツ航空へ引き渡されている。
またライバルの米国ボーイングも、A320シリーズに似た性能の737型機を改良した「737 MAX」を開発し、今年1月29日に初飛行に成功している。ボーイングによると、737 MAXの燃費はA320neoより、約8%向上しているという。
参考
・A321neo takes to the sky for the first time | Airbus Press release
http://www.airbus.com/presscentre/pressreleases/press-release-detail/detail/a321neo-takes-to-the-sky-for-the-first-time/
・Spotlight on... | Airbus, a leading aircraft manufacturer
http://www.airbus.com/aircraftfamilies/passengeraircraft/a320family/spotlight-on-a320neo/