豊橋技術科学大学(豊技大)は2月12日、脳の表面に貼り付けられる柔らかさを持った無線電力伝送デバイスを実現したと発表した。

動物が手足を動かすと脳の神経細胞から微弱な神経電位が生じる。この神経電位の解析は、ヒトとロボットをつなぐブレインマシンインターフェースの実現に向けて盛んに研究されている。現在は主にワイヤを用いて脳表面に埋め込まれた電極から神経電位の計測が行われているが、頭蓋骨の開口部から感染症を引き起こす懸念があるなど、長期間にわたって脳の信号を観測するためには生体内に完全に埋め込む無線神経インターフェースの開発が求められている。

今回の研究では、シリコン基板による高機能かつ小型な回路チップを、厚さ10μmのフレキシブルフィルムに実装する手法を開発。同手法を用いることで、整流器チップとフィルムアンテナを一体化した無線電力伝送デバイスを製作した。同デバイスは5mm×27mmの面積で、シリコン基板による回路面積が全体の3%を占めている。そのため、大部分がフレキシブルフィルムで構成されており、脳の形状に対して柔軟に密着することが可能だという。また、同デバイスを水槽に浸して、10cmの距離で無線電力を伝送することに成功した。

埋め込みデバイスに無線電力を供給することで、さまざまな回路を駆動することが可能となる。研究グループは今後、シリコンチップにさらなる回路機能を搭載することで無線で脳の信号を取り出すことを目指すとしている。

回路チップとフレキシブルアンテナを一体化した無線電力伝送デバイス

無線神経インターフェースに向けたフレキシブルデバイスの概念図