日本IBMは2月9日、グローバル・テクノロジー・サービス(GTS)の最新の戦略に関する説明会を開催した。
日本IBMの取締役専務執行役員でグローバル・テクノロジー・サービス事業本部長を務めるMahajan氏は、GTSについて「社内最大の事業でありながら、その内容をあまり発表していないしていない。だが今後、GTSの役割はさらに大きくなる」と述べた。「コグニティブでもクラウドでもインフラがしっかり整っていないと実現できない。これは日本企業において大きな課題になっている」とその背景を語った。
同事業の2015年世界全体の売上は前年比1%増の320億ドル、これはIBM全体の40%を占める。日本における比率はさらに高くなり、「5割以上」とMahajan氏は言う。実績としては、世界の上位60の銀行の90%がGTSを利用しており、日本でも製造業トップ15社の90%、日経売上高ランキングトップ30社の70%と高い採用率を誇る。
アウトソーシングがスタートした1990年代からこれまでの間、GTSも市場の環境と技術トレンドに合わせて変革を続けてきた。2000年代から2012、2013年頃までの「第2の変革」では製造業を中心にグローバルリソースの活用、プロセス最適化がキーワードとなったが、現在は「第3の変革」としてアウトソーシングとITサービスが組み合わさったエンタープライズITの実現がキーワードとなる。
具体的には、コグニティブ、クラウド、セキュリティ、アナリティクス、モバイルなどの技術を利用し、ハイブリッドクラウドへの対応やサービスとしてのITを実現する。既存のインフラ環境とクラウドの環境を組み合わせて統合し、いかに新しいサービスを提供するか――「ここが最大の課題」とMahajan氏は見る。重要なのは最適化だ。「IT投資が増えない中、最適化により競争力を高める必要がある」からだ。
GTSで提供するサービスはシステム、モビリティ、バックアップなどのレジリエンシー、ネットワーク、テクニカルサポート、クラウド、セキュリティの大きく7カテゴリ。テクニカルではIBMに加えてIBM以外の技術も対象とする |
顧客の要件が変化していることを受け、IBMでは2015年にグローバルレベルでGTS事業を再編、「ストラテジックアウトソーシング(SO)」「インテグレーテッド・テクノロジーサービス(ITS)」「テクニカルサポートサービス(TSS)」と大きく3つに分かれていたところ、SOとITSを合わせて「インフラストラクチャーサービス(IS)」とし、ISとTSSの2本柱とした。これにより、スピードとアジリティが大きく改善し、「お客さまに好きなサービスを選んでもらえるようになった」とMahajan氏はメリットを説明する。
サービスの提供(デリバリー)モデルも強化し、自動化技術を活用する。例えば、Watsonの利用により問題判別エージェントが37%改善、所要時間は27分から17分に改善するなどの結果が得られたほか、イベントの相関付けとチケットの自動発行では自動相関技術の利用により重大なイベント10%を特定、重要度1の問題イベント件数を68%削減、平均復旧時間は84%改善するという。
人材についても、スタッフのスキルとエンゲージメントの両面を積極的に強化し、日本市場にあったサービス開発を進めていくという。
最後に、Mahajan氏は2016年に提供を予定している新しいソリューションを2つ紹介した。1つ目はさまざまなクラウド、オンプレミスなどのシステムのモニタリング・管理ソリューションとなるIMI(インテグレーテッド・マネージド・インフラストラクチャ)だ。これは必要なサービスを選択できるモジュラー型のサービスとして提供される。企業の多くがさまざまなクラウドを利用するマルチクラウド環境を採用している中、運用や管理が課題となっている。IMIでは運用の一元化、費用の最適化などのメリットが得られるとする。
2つ目は、大きく報じられた2014年のAppleとの提携に基づく「Mac At Work」だ。IBM社内でも6カ月で3万台のMacを配布、週1900台ペースで増えているという。
「Mac At Workの利用により、Windowsがなくなるというわけではなく、業務に合わせてスタッフがMacかWindowsかを選択できる」とMahajan氏は説明する。セルフサービス、ゼロタッチ・エンロールメントなどによりMac1台当たり270ドルのコスト削減、ヘルプデスクの利用も5%と低レベル(Windows PCが40%であるのに対し)であるという効果が出ているが、「難しいチャレンジ。この経験を提供できる」とMahajan氏は語る。Macの導入に加え、管理・サポートのスキル不足を解決できるとしており、日本での展開に期待を寄せた。