SAPジャパンは2月3日、2016年度のビジネス戦略に関する記者説明会を開催した。説明会では、代表取締役社長の福田譲氏が2015年度のビジネスを振りかえるとともに、2016年度のビジネスについて説明を行った。
2015年の業績はグローバル、国内のいずれも好調だったという。グローバルは、クラウドの新規受注が前年比103%増を記録するなど、総売上は10%増の208億1000万ユーロと、目標を上回る業績を達成した。
福田氏によると、総売上のうちクラウドの比率が32%となっており、2018年度にオンプレミスとクラウドを逆転するという計画の実現が見えてきたとした。
対する国内は、クラウドの新規受注が前年比193%増を達成するなど、総売上は5年連続増、4年連続最高額を更新し、6億3600万ユーロを記録した。
福田氏は「クラウドの新規受注の件数はグローバルに比べるとグロスが少ないので、一概には比較できないが、伸びが著しい」と、クラウドビジネスの好調ぶりをアピールした。
2015年度の最大のトピックスとしては、11月に発表された「SAP S/4 HANA Enterprise Management」」が紹介された。同製品は、主力製品のビジネススイート「SAP S/4 HANA」の最新版「SAP S/4 HANA Enterprise Management」となる。会計機能「Simple Finance」に、営業、サービスといった9の新しいビジネスプロセスが加わっており、機能が大きく拡張した。
福田氏は5周年を迎えた「SAP HANA」についても言及した。HANAは当初、インメモリ・データベースとして処理の速度に注目が集まっていたが、その後、機能拡張とともにプラットフォームとして進化を遂げて、今では導入企業が1万社を超えているという。
続いて、福田氏は2016年の戦略として「デジタル元年」に対応していくという方針を示した。「SaaSやPaaSを利用することが当たり前になってきた今、次は、オンプレミスのシステムが動くだけでなく、クラウドならではのサービスが必要となってくる。HANAならクラウドの力を生かし、企業のデジタル変革を推進できる」と同氏。
同社はその具体策として、デジタル変革を推進するためのデジタルフレームワークを掲げている。このデジタルフレームワークは、中核となるS/4 HANAに加え、「タレントマネジメント」「企業間ネットワーク」「モノのインターネット」「セールス&マーケティング」という5つのコンポーネントにより構成される。
福田氏は同社のデジタルフレームワークの意義について、「デジタルビジネスにおいては、データをデジタル化して、企業が生のデータを利用できる仕組みを整備することが不可欠。そして、企業がITによってビジネスの価値を創出するため、われわれは25の業種のそれぞれの業務について、どのソリューションを提供するかをテンプレートとして用意している。国内では、昨年12月にユーティリティ事業向けのフレームワーク『SAP Utilities Digital Transformation』を発表したが、グローバルでは約10のフレームワークを提供している」と説明した。
オンプレミスのソフトウェアを中心にビジネスを展開してきたオラクル、マイクロソフトもクラウドサービスへのシフトを図っているが、SAPもそうしたベンダーの1つであり、競争は激化している。
SAPのクラウドのアドバンテージの1つはHANAをベースにしていることだろう。福田氏によると、昨年に製品を切り替えた既存ユーザーは必ずHANAの導入を検討したとのことで、ユーザーの間でもHANAの長所は浸透してきたようだ。
福田氏は「われわれは、S/4 HANAではなくHANAへの移行を大きな動きととらえている」としたうえで、今年はHANAの入れ替えが進むのではないかという期待を示しており、HANAが同社の成長のカギとなっているのは間違いなさそうだ。