リクルートライフスタイルは2月3日、米Appleとモビリティパートナー契約を結んだと明らかにした。

同社は無料POSレジアプリ「Airレジ」を展開しており、21万アカウント以上の小売店ユーザーが利用している。同社はAirシリーズとして、受付管理アプリ「Airウェイト」や予約管理システム「Airリザーブ」も提供しており、これらプロダクト全般でApple協力の下でiOSアプリを提供していく。

一方のAppleのモビリティパートナーと言えば、IBMとの協業関係が一番わかりやすいだろう。2014年7月に発表された両社の提携は業界にとって大きなサプライズだったが、提携の骨子は「IBMのエンタープライズ向けソフトウェアのノウハウとAppleの洗練されたユーザーインタフェースをマイグレーションする」ということだ。

このモビリティパートナーには、リクルートライフスタイル以外にも米Boxや米DocuSign、米MicroStrategyといったエンタープライズにおける先進企業の名が並ぶ。こうした企業の中にリクルートライフスタイルが参加することになるのだが、Apple Japanによると同社が日本初のパートナー契約となる。

モビリティパートナーで何が変わるのか

具体的には、モビリティパートナーとなることで、リクルートライフスタイルは以下の3つのポイントでiOSビジネスを進めていくという。

  • AirレジのUI変更

  • Apple Retailにおけるイベント開催

  • エンジニア教育

Airレジのユーザーインタフェース改善は一つの大きなポイントだ。

「Appleの本国エンジニアと協業してUI改善を行っています。iOSにはデザインガイドラインが存在しますが、完璧に準拠しているわけではありませんでした。これからは、Appleのエンジニアの方と、ガイドラインに準拠しつつも、自分たちのノウハウをかけあわせたUI/UXを提供したいと考えています。もちろんそれは、最終的に店舗で実際に利用する店員の方が使いやすいように、という目的のためです」(リクルートライフスタイル 執行役員 大宮 英紀氏)

デザイン改修例(左:旧、右:新)。旧デザインでは、選択メニューの一覧が支払遷移の上に位置しており、支払いボタンと合計金額が同一ボタンとなっていて内容が判断しづらかった。新デザインでは、金額確認と支払いボタンが別のため、それぞれのタスクを切り分けて考えやすい(新UIの画像は開発中のもので、製品版では変更される可能性がある)

また、Airレジに関してはすでにAppleが先日オープンソース化を発表した開発言語「Swift」でのアプリ制作が行われている。新言語への対応は、エンジニアのモチベーションにもつながる上に、Apple協力の下で育成できることで「よりSwiftにシフトできる環境が整った」(大宮氏)という。

モビリティパートナーで世界へ

このモビリティパートナーは世界への足がかりの新たなる一歩と言ってもよい。同社は2015年1月にAirレジの英語版をリリースしたが、これは「R&Dとしての位置付け」(大宮氏)のもので、国によって異なる税や商慣習に対応する必要があるPOSレジは、それぞれの国に最適化しなければならない。

「いくつかテストマーケティングを行っていて、日本のようにさまざまな小売店に応用できるという地域があれば、特定の業態に特化したソリューション展開を考えている地域もある。慣れ方が地域により異なるので、そういうところをAppleエンジニアとのコミュニケーションも含めて最適化していきたい」(大宮氏)

今後、Airシリーズはどのように進化していくのか。大宮氏は、世界展開と国内展開の二軸で見通しを語った。

「日本では無料提供という形をとっていますが、グローバル展開ではそれがすべてではないと思っています。現地の法人市場で展開するならば、最初から有料化してプレミアムなアプリケーションとして(プロダクトを)成立させる可能性もある。今回の発表で大企業向けのビジネス支援までという文言がありますが、すでに国内大手の家電量販店さまにも導入いただいており、企業規模を問わずに使いやすいプロダクトに仕上げています。

(Apple)のグローバルのモビリティパートナープログラムの中で一緒にビジネスを進めていくことになったのは、加速していく1つのポイントになったと思います。より使いやすくするだけでなく、国内では消費税増税や軽減税率などの問題があるので、企業にとってはバックヤードコストがかかる時期なので、今回のタイミングで発表できたことは大きなインパクトだと思います」(大宮氏)

なお、パートナー契約のポイントの1つとして挙げたApple Storeにおけるイベント開催は3月3日の銀座を皮切りに全国5店舗で開催される。来年4月に迫った消費税増税対応や軽減税率への対応についても解説する予定だという。