韓国Samsung Electronicsは、1月28日に発表した2015年10~12月期の企業業績確定版において、同社最大の稼ぎ頭である半導体部門の営業利益が2兆8000億ウォン(約2800億円)に留まり、2014年7~9月期以来5期連続で続いていた前期比増益にストップがかかったことを明らかにした。前年同期比では、わずかに4%増加したものの、前期比では、23%と2桁の急落を記録。2兆8000億ウォンという数字は市場関係者の予想を大きく下回るだけではなく、1月8日にSamsungが企業全体の業績速報値を発表した際に同社関係者がもらした3兆1000億ウォンよりも約3000億ウォン少ない結果となった。
2015年の年間ベースでみると、半導体部門の営業利益は12兆7900億ウォン(約1兆3000億円)で、前年比では46%の増加となる。このように通年で同社全体を眺めると、確かに好調に見えるが、これは2015年第1~3四半期の好業績を反映したものであり、第4四半期にかぎれば、上述したように営業利益は前期比で2桁減となった。
半導体事業の業績が年末にかけて急速に悪化した原因は、ソニーと同様、AppleやSamsungをはじめとする、ハイエンドスマートフォン(スマホ)のベンダが行った減産によるアプリケーションプロセッサを中心とした半導体製品の需要の減少に加えて、世界的なパソコン需要の減少に伴うDRAMやNAND型フラッシュメモリの価格急落によるものと見られる。
Samsungは最近、米QualcommやAMDから新たな半導体の製造を受託したようだが、一方では、今秋にAppleから発売される予定の新型iPhone用アプリケーションプロセッサの注文をすべて台湾TSMCに奪われたとの観測が台湾および韓国国内で出ており、メモリ価格もさらに下落する見込みなので、Samusngの半導体事業の業績は、今後さらに悪化するのではないかとの見方が有力である。
Samsungは、2015年には14/16nmプロセスの開発でTSMCに先行し、Appleの大量受注を獲得したが、今回は、Appleが、Samsungの最新の14nmプロセスで作製したデバイス性能とTSMCの最新の16nmプロセスで作製したデバイス性能を精査した結果、TSMCに全量注文することに決めたという憶測が一部で流れている。この結果、Samsungは、他社に先駆けて10nmデバイスの量産を2016年末までに始めることで、挽回をはかる計画のようだ。AppleのiPhone向け半導体製造受託をめぐるSamsung vs TSMCのシーソーゲームはエンドレスの様相を呈している。
Samsungは、DRAM、NAND、ロジックすべての分野で、世界最先端の微細化あるいは3次元化を急ぎ、これにより高付加価値化で業績回復を図る作戦のようだが、その一方で社内には、「スマートフォン、半導体に替わる第3の柱を早急に見出して育成しなければ将来はない」という悲壮な声も出始めており、同社幹部は危機感を強めている。すでに、役員クラスの大量リストラや本社機能のソウル市内から郊外への移転などにも手を付けて、社員の気持ちを引き締めようとしている。
なお、同社は、今回の業績発表に合わせて、2015年の半導体向け設備投資額は14兆7000億ウォン(約1兆5000億円)に達したことを明らかにした。ただし2016年の投資額は現在策定中ということで、発表されなかった。