国立がん研究センター(国がん)と医薬品医療機器総合機構(PMDA)は2月2日、日本のレギュラトリーサイエンスの振興に資することを目的として、同日付で包括的連携協定を締結したことを発表した。

「レギュラトリーサイエンス」とは、根拠に基づく的確な予測、評価、判断を行い、科学技術の成果を人と社会との調和のうえで最も望ましい姿に調整するための科学のことで、平成26年5月30日に制定された健康医療戦略推進法においては、「医療分野の研究開発の成果の実用化に際し、その品質、有効性および安全性を科学的知見に基づき適正かつ迅速に予測、評価および判断することに関する科学の振興」、すなわちレギュラトリーサイエンスの振興を図っていくことが、国の方針として打ち出されている。

PMDAは、「医薬品・医療機器などの審査」「安全対策」「健康被害救済」の三業務を行っており、これまでに、連携大学院協定を19の大学と締結し、PMDA職員を客員教員として派遣することで、レギュラトリーサイエンス教育に貢献してきた。また、革新的医薬品・医療機器・再生医療製品実用化促進事業として、大学・研究機関など24機関と連携。アカデミアから研究者をPMDA職員として受け入れ、医薬品・医療機器などの審査における質向上を図ってきた。

今回の包括的連携協定は、上記の連携を発展・強化したものであり、連携対象を大学に限定せず、国立高度専門医療研究センターなどとも恒常的な人材交流を図っていくことを目的としている。国がんは、同協定締結先の第一号となる。

国がんとPMDAはこれまでにも人材交流を行ってきたというが、同協定の締結により、さらに強力な連携・協力体制を構築するとしている。具体的には、国がんが実施する「新規抗がん薬の治療最適化を目指した包括的情報集積体制の確立に関する研究」を共同で行う。また、がん領域において、薬事規制と臨床の双方を踏まえた実用性の高い指針・手引きなどの作成を目指す。さらにPMDA職員に対し、国がんでの研修を実施。国がん職員は、医薬品・医療機器行政での人材育成において、がん領域の専門家として貢献していく。互いが現場を知ることで、より有効でより安全な医薬品・医療機器をより早く医療現場に届けるというところが同協定の狙いだ。

PMDAは今後も連携先を増やしていく考えを示しており、今年度内だけでも2~3件の追加を予定しているという。

国がん研究センター 理事長 堀田知光氏(左)と医薬品医療機器総合機構 理事長 近藤達也氏(右)