東北大学(東北大)は1月28日、全ゲノム解析情報を用いて急性リンパ芽球性白血病の治療効果判定に成功したと発表した。
同成果は、同大学 東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)と東北大学病院 血液・免疫科の研究グループによるもので、1月29日付けの英科学誌「British Journal of Haematology」オンライン版に掲載される。
ToMMoは、2013年より地域住民コホート調査を実施しており、同調査では原則としてすべての参加者から採血を行っている。その血液はバイオバンクの構築に用いられるとともに、一部は参加者への結果回付などのために通常の健康診断よりも詳細な検査に付される。
今回、同調査への参加者に対する詳細血液検査において、急性白血病の疑いのある参加者が発見され、本人への説明と同意のもとに、診断と治療のため東北大学病院血液・免疫科への紹介が行われた。同科における検査から、同参加者は初期前駆T細胞性急性リンパ芽球性白血病(ETP-ALL)に罹患していると診断された。
ETP-ALLは急性リンパ芽球性白血病のうちでも比較的まれで、治療が困難なタイプの白血病。白血病の発症には骨髄細胞で後天的に発生した遺伝子変異が関連しているが、ETP-ALLではそのような分子基盤の解明が進んでいない。
そこで今回、治療方針の策定と効果判定に包括的な遺伝子解析が有用であるとし、ToMMoで全ゲノム解析を実施。その後、治療経過に沿って、全ゲノム解読によって得られた情報を活用し、次世代シークエンサーによる治療効果の判定支援を行ったという。
今回の成果は、コホートでの偶発的所見が早期に研究参加者に直接還元されたケースであり、今後ToMMoでは、今回のような直接的な貢献だけではなく、これまでの研究で得た知見を各種悪性腫瘍の治療効果判定へ応用することで、地域医療の進歩へ貢献していきたいとしている。