東京都・京橋のLIXILギャラリーは、江戸時代の「薬草」に焦点を当てた展覧会「薬草の博物誌 森野旧薬園と江戸の植物図譜 展」を開催する。会期は3月3日~5月21日(水曜休館)。開場時間は10:00~18:00。入場無料。

カラスウリ Trichosanthes cucumeroides ウリ科。根は「王瓜根(オウガコン)」または「土瓜根(ドカコン)」と称し、中国では利尿・瀉血薬として黄疸や下血の治療に用いる。 「本草図譜」(岩崎灌園著、1830~44年の刊に彩色を加えて発刊した大正版)より

「ネムノキ」。マメ科。樹皮は「合歓皮(ゴウカンヒ)」という生薬。「草木花実写真図譜」(川原慶賀著、明治初期刊)より。1836年に刊行された「慶賀写真草本」の改題再刊本。和名と洋名を両方記し、その特徴や効能を書き込んでいる。

同展は、江戸時代から続く森野旧薬園と当時描かれた薬草を中心とした植物図譜を通して、幅広い本草学の世界とその魅力を紹介するもの。本草学は、私たちにも馴染み深い漢方薬の元になっているもので、江戸時代に発展した学問である。江戸後期には原料の一種である薬草は幕府により国産化政策がとられるほど貴重なものであったという。また、当時人々の関心も高く、多くの本草書や図譜が出版されたということだ。

「オケラ」(右)と「ホソバオケラ」(左)。それぞれ生薬「白朮(ビャクジュツ)」と「蒼朮(ソウジュツ)」の原料となる薬草。「松山本草」(森野賽郭著)より。画像提供=髙橋京子、森野旧薬園

「トロロアオイ」根が生薬となる。「彩色植物図」(関根雲停画、1841~1873年)より。いきいきとした筆致が、関根雲停の真骨頂

「ツキヌキソウ」。「新訂草木図説」(飯沼慾斎、1875年刊)より。牧野富太郎が愛読書であったこの図譜に部分図を貼ったり、書き込みを加えたりしたもの。その後、大幅に増補した「増訂草木図説」(1907~1913年)を刊行。

薬草から植物全般へと研究、興味の範囲が広がっていくのもこの時代で、そのころ薬草への造詣が深い人物として現れたのが森野初代藤助通貞(号:賽郭)であった。賽郭は、現存する日本最古の私設薬草園「森野旧薬園」を開設し、晩年には約千種の動植物の姿を、自然科学的な観察眼で色鮮やかに描いた「松山本草」を完成させた。この薬草園には今も薬草に関わる温故知新の知恵が息づいているということだ。同展では、「薬草」に焦点を当て、森野旧薬園を紹介するとともに、江戸の初期から本草学が近代植物学へ移行する時期までに描かれた主要な植物図譜の変遷が、約90点の実資料の他、写真、映像などで展観される。

また、同展の開催に際し、LIXIL BOOKLET「薬草の博物誌 森野旧薬園と江戸の植物図譜」が発売された。価格は1,800円。購入など、詳細はLIXIL Webページより。