産業技術総合研究所(産総研)は1月26日、有機デバイスに特有のばらつきを利用して偽造を困難にするセキュリティタグ回路を開発したと発表した。

同成果は産総研フレキシブルエレクトロニクス研究センター印刷デバイスチームの吉田学 研究チーム長、栗原一徳 研究員、ナノエレクトロニクス研究部門エレクトロインフォマティクスグループの堀洋平 主任研究員、小笠原泰弘 研究員、片下敏宏 主任研究員によるもの。

特許庁の報告によれば、2013年度の模倣品による国内総被害額は1100億円にも上る。一部の製品では、個々の製品に固有の番号を付加して、トレーサービリティーを向上させ真贋判定に役立てているが、バーコードやQRコードなどの印刷された情報や、集積回路に電気的に記録された情報は複製が可能であるため、偽造品や海賊版が正規品として流通してしまうリスクがある。そのため、偽造困難なIDタグなどを利用した、真贋を区別できる製品の需要増加が予想されている。

研究グループが開発したセキュリティタグは、作製時に有機デバイスに生じるわずかな素子間のばらつきを利用して、同じ設計の回路それぞれが異なった固有の番号を生成する。今回、大気中での安定性が高い有機半導体と、有機材料と無機材料を用いたハイブリット絶縁膜を用いて、わずか2Vで動作するエラー率の低い回路の開発に成功した。この回路はフレキシブル基板上に作成でき、商品パッケージなどにIDタグとして張り付けることで偽造品などの流通防止や回路自体の改ざん困難性の向上への貢献が期待される。

なお、同技術の詳細は1月27日~29日に東京ビッグサイトで開催される「プリンタブルエレクトロニクス2016」で発表される。

今回開発したセキュリティタグ回路(左)とパッケージに使用したイメージ