政府は22日、昨年12月の「総合科学技術・イノベーション会議」で了承した「第5期科学技術基本計画」を閣議決定した。同計画は、2016年度から5年間の科学技術政策の方向性を定め、予算配分に直接影響する重要な意味を持つ。研究者新規採用の女性比率を3割に高めるなど、八つの具体的な数値目標を初めて明記したのが特徴。5年間で人材育成のための環境整備を進めて科学技術基盤の底上げを目指す。

基本計画は、まず、日本が持続的経済成長と地域社会の活性化を実現するために、科学技術分野でイノベーションを起こす力を持ち続けることが前提になると指摘した。

その上で(1)未来の産業創造と社会変革(2)経済・社会的な課題への対応(3)基盤的な力の強化(4)人材、知、資金の好循環システムの構築―を計画の4本柱にした。

具体的な数値目標として「40歳未満の大学教員を1割増加し、将来的には3割以上にする」「新規採用に占める女性研究者の比率を3割にする」「引用される回数が『トップ10%』のレベルの論文を全論文の1割にする」「大学、非営利団体・公的機関、企業の各セクター間の研究者移動数を2割増やす」「企業から大学と国立研究開発法人への共同研究の受入額を5割増やす」「研究開発型ベンチャー企業の新規上場数を倍増する」「国内特許出願申請件数に占める中小企業の割合を1.5割にする」「大学の特許実施許諾契約件数を5割増加する」―の八つを明記した。

今年3月11日で東日本大震災から5年を迎える。今回の計画は「基本的な考え方」の中で「東日本大震災からの復興再生も道半ばで、着実に対応していく必要がある」とし、首都直下地震や南海トラフ地震に備えた災害予測のための技術研究強化を盛り込んだ。また地球温暖化対策に寄与する技術開発や、人工知能・ロボット、サイバーセキュリティーなどの技術開発も重点課題にしている。

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