ファナックとシスコシステムズは1月21日、協業して製造業の工場で稼働している 産業ロボットをネットワークに接続し、製造業の顧客企業で効率的な運用を推進していくと発表した。今回、工場内に設置されたサーバでロボットの稼働状況を解析し故障予知を行うソリューションを共同で開発した。
初めに、専務執行役員 シスコ コンサルティングサービス 戦略事業開発 兼 IoEイノベーションセンター担当の鈴木和洋氏が「2016年のビジネス戦略において、注力分野の1つに製造業を据えており、IoT Systemの日本での販売強化も柱としている」と、今回の発表が同社のビジネス戦略に沿ったものであることを明らかにした。シスコは製造業のほか、パブリックセクター(スマートシティ、社会インフラ)、サービス(スポーツ&エンターテインメント、O2O)においてIoTソリューションの提供を推進している。
共同で開発したソリューション「ZDT」については、ファナック 専務執行役 ロボット事業本部長の稲葉清典氏が説明した。
稲葉氏は「当社が提供している資本財は長期間にわたり安全に付けることが大切であるため、"止まらない工場"の実現を目指している。その具体策の1つとして、20年にわたり、知能ロボットの開発を続けている。われわれの知能ロボットの特徴は『見て』『感じて』『考える』ことができること。こうした機能により、工場の効率性に加え、信頼性を向上できる」と、知能ロボットにより、「止まらない工場」の実現を目指していると語った。
実際、ファナックでは知能ロボットを導入することで、チョコ停(小さなトラブル)を10分の1にまで削減し、工場の連続稼働を実現したという。
ただ、さまざまな働きをする知能ロボットだが、ロボットのギアに不具合が起きた場合など、発生した出来事に対処することは難しいという。そこで、故障を予知して対処することで、生産・製造ラインの停止、生産エリアや工場全体で生産業務の中断に至る事態を避けることを目指した。
「ZDT」は、ロボットや制御装置、製造工程に何らかの不具合が発生する可能性をシステムが事前に検知し、ダウンタイムが生じる前に情報を提供するため、事前の保守スケジュールに基づく操業停止時間内に問題への対応を済ませることを可能にする。
具体的には、「ZDT」において、ロボットはシスコのネットワークを通じて、工場内のエッジコンピューティングのデータ収集装置に接続する。保守管理に関連するデータが工場内の解析サーバに蓄積され、解析エンジンによって規定範囲を超えた例外事象がないかどうかがチェックされ、保守サービスの必要性を予測。部品の交換が必要な場合は解析サーバから通知が行われ、関連する作業内容の指示も合わせて表示される。
ZDTにおいて、シスコの製品はUCSサーバ、各種スイッチのほか、米国のデータセンターにファナックのプライベートクラウドが構築されているという。
ファナックは今後、同社のロボットが稼働している生産施設に対し、ZDTの導入を目指す。稲葉氏は、シスコを協業先に選択した理由について、「自動車企業をはじめとする顧客企業と話していると、『データを外に出して問題ないのか』といういわれることが多く、サービスを提供する上でセキュリティを担保できるかどうかが最大の課題となっている。こうした観点から、シスコシステムズを選んだ」と説明した。
ZDTは、シスコの「IoE イノベーションセンター」のショーケースとして、設置される予定だ。
シスコは同日、米国本社がIoT事業の拡大を目指すKiiに出資したことを発表した。両社は今後、それぞれのプラットフォームを組み合わせて、国内外のさまざまな業種の企業向けモビリティソリューションの提供やIoT事業の拡大を加速していくという。
発表会に登壇したKiiの共同設立者兼会長の荒井真成氏は、「当社は2014年頃から、IoT関連のビジネスにフォーカスしてきた。IoTビジネスへのアプローチとして、これまではB to Cが多かったが、スマートハウスのエンドソリューションに採用されるなど、B to Bが増えてきた。今後は、シスコと共にデバイスのインターオペラビリティなどに取り組んでいきたい」と語った。