生理学研究所(生理研)と九州大学(九大)は1月20日、加齢高血圧リスクを高める受容体を特定したと発表した。
同成果は、九州大学大学院 薬学研究院 西田基宏 教授、生理学研究所 西村明幸 研究員およびマレーシアSabah大学、香川大学、ベルギー自由大学らの研究グループによるもので、1月19日付けの米科学誌「Science Signaling」に掲載された。
血圧調節に関与する最も重要な生理活性ペプチドのひとつに、レニン-アンジオテンシン系という血圧や循環血液量の調節に関わるホルモン系により産生されるアンジオテンシンIIがある。アンジオテンシンIIは、細胞膜上にあるアンジオテンシン受容体(AT1R)に作用することで血管平滑筋細胞を肥大させ血圧を上昇させる。
今回同研究グループは、アンジオテンシンIIの応答性に関与する分子としてP2Y6Rと呼ばれる受容体に注目。通常のマウスとP2Y6Rを持たないマウスの双方にアンジオテンシンIIを4週間投与したところ、P2Y6Rを持たないマウスでは血圧上昇と血管中膜の肥厚が抑制されることがわかった。
さらに、細胞膜上でP2Y6RはAT1Rと複合体を形成していること、P2Y6Rと結合するMRS2578という化合物が、AT1RとP2Y6Rの複合体形成を阻害することも明らかになった。アンジオテンシンIIとMRS2578を同時投与することで血圧上昇が抑制されたことから、AT1R-P2Y6R複合体がアンジオテンシンIIによる血圧上昇に重要であることが示されたといえる。
また、4週齢の成体マウスの血管平滑筋細胞では、アンジオテンシンIIが細胞の肥大を引き起こすが、胎児の血管平滑筋細胞では肥大ではなく、細胞の増殖が優位に起こることが知られている。
そこで今回、胎児と成体の血管平滑筋細胞においてP2Y6R遺伝子の発現量を調べたところ、P2Y6R遺伝子は成長するにつれてその量が増加することがわかった。成長に伴いAT1R-P2Y6R複合体が増加することで、アンジオテンシンIIの応答性が増殖から肥大応答に変化することが明らかになった。
西田教授は「加齢に伴うAT1R-P2Y6R複合体の増加が、高血圧リスク上昇の原因の一端を担っているのかもしれません」とコメントしている。また今回の成果は、加齢に伴う高血圧の原因解明だけでなく、加齢高血圧による心血管リスクの予防・治療法開発にも貢献することが期待されるという。