2016年1月13日~15日に東京ビッグサイトで開催された「インターネプコン・ジャパン2016(エレクトロニクス製造・実装技術展示会)」の特別講演セッションで、米国General Electric(GE)の子会社である日本GEの専務執行役員の田中豊人氏(図1)が、同社が世界に向けて提唱しているインダストリアル・インターネットへの取り組み、さらには最近力を入れているソフトウェア事業戦略について語った。
図1 日本GE 専務執行役員の田中豊人氏 |
田中氏は、まずGEの歴史から話を始め、最近の企業としての変貌ぶりを紹介した。「130年余り前に発明王エジソンによって創業されたGEは「『世界のために本当に必要なモノを創るのだ』と言う創業者の言葉をいわば社訓として活動してきたし、これから行動していくが、そのために、現在、全社を挙げてハードウェアカンパニーからハードウェア+ソフトウェアカンパニーへ急速にシフトしている」とするほか、「GEは、かつて、ジャック・ウエルチという有名な経営者が世界No.1かNo.2のビジネスは何でもやる(3位以下のビジネスは売却する)と言うコングロマリオット(複合巨大企業集団)だったので、今でもそのようなイメージで捉えている人が多いが、それは過去の姿であり、今はまったく違う。現在は、世界中のどこでも誰もが必要としているインフラ事業にポートフォリオを集約している。家電や金融ビジネスなど非インフラ事業は売却する一方で、2015年にはフランスAlstomの発電・送配電設備の製造事業を買収し、この方針を鮮明にした」と会社の方向性が大きく変わってきていることを強調。また、「しかし、これらのインフラ・ハードウェア販売で一時的な売り上げを立てるのではなく、むしろ保守サービスやIoTサービスで顧客と長期契約を結び安定的な売り上げを立てるビジネスモデルへシフトしている」とビジネスの在り方そのものが変化していることを付け加えた。
売り上げの3/4はサービス事業
同氏はGEのメンテナンスサービスの変遷について次のように説明した。「従来は、顧客の依頼に基づいて保守や修理サービスを提供していたが、1995-2000年を境に包括メンテナンス契約により、長期的な保守を受託するようになり、2012-2015年を境に、産業機械そのもの状態をベストに保ち効率を向上させるだけではなく、装置やその周辺環境から収集したビッグデータを分析して顧客と一緒になって顧客のアウトプットや価値を最大化するサービスへとシフトしている。15.6兆円の総売上の内、機器販売26%、サ―ビス74%という比率となっている。2015年第3四半期時点で受注残高は19.9兆円にも達している。これは15年先までの長期メンテナンスサービス契約の未実施分ということだ」と田中氏は述べて、すでにサービスの売り上げが機器販売の売り上げの3倍にも達していることを明らかにした。
インダストリアル・インターネットで価値創造
田中氏は、製造業をサービス業化するインダストリアルインターネットの成立要件として
- ブリリアントな(=卓越した)産業機器
- 産業機器からのビッグデータ
- ソフトウェア+アナリティクス(=分析)
- さらなるインテリジェントな機器の設計、操作、保守を可能にする業務に携わる人々
が必須であると述べた。
そして図2に示すように、クラウドベースの安全なネットワーク上で、産業機器から多数のデータを収集し、そこからビッグデータの分析を行い、可視化し、適切な人や機器と分析結果を共有し、機器へ情報還流をするというループを回す。
これにより、
- 効率向上およびコスト削減(産業機器やプロセスを最適化して効率をあげることにより無駄を省ける)
- リスク回避(産業機器の稼働状況に対する視認性が高まる結果、環境、健康、安全性に十分配慮できるようになる)
- 新たな顧客サービスの創出(ビッグデータとその分析から生まれる知見によって、新たなサービスやビジネスモデルを産む)
などのビジネスメリットを引き出すのがインダストリアル・インターネットの目的であるとした。