慶應義塾大学(慶大)は1月15日、天の川銀河の中心領域にある特異分子雲中に太陽の10万倍の質量を持つブラックホールが潜んでいる痕跡を発見したと発表した。
同成果は同大理工学部物理学科の岡朋治 教授らの研究チームによるもので、米国の天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal Letters」に掲載された。
同研究では天の川銀河の中心核巨大ブラックホール「いて座A*(エー・スター)」から約200光年離れた位置にある特異分子雲を国立天文台野辺山45m電波望遠鏡を用いて詳細な観測を実施した。その結果、同分子雲の中心に太陽の10万倍の質量をもつ重力源があることが判明。この重力源の位置に対応する天体は見られないことから、ブラックホールである可能性が高いと考えられるという。これは天の川銀河では「いて座A*」に次いで2番目の大きさになる。
今回の研究成果について研究グループは、太陽の数百倍~10万倍程度の「中質量ブラックホール」が合体を繰り返すことで中心核ブラックホールが形成され、さらに成長していくというシナリオを支持するものであるとともに、星間ガスの運動からブラックホールを間接的に検出する手法を拓いたという点でも意義が大きいとしている。