Cypress Semiconductorの日本法人である日本サイプレスは1月12日、都内で会見を開き、同社の車載向けビジネス戦略などの説明を行い、2016年に拡充される製品ポートフォリオの紹介を行った。
2015年3月のCypressとSpansionの合併以降、同社の車載向けポートフォリオはマイコン、メモリ(SRAMおよびNOR形フラッシュメモリ)、アナログパワーマネジメントIC(PMIC)、そしてPSoCと幅広いものとなり、現在は車載向けマイコンおよびメモリの合算でのシェアは3位だという。
同社PSD事業部AUTO担当バイスプレジデントの赤坂伸彦氏は、「車載ビジネスを考える上で、もっとも重要なのは品質。各種の規格認証を中心にコアコンピテンシとして30年にわたって取り組みを進めてきており、今後もそれは変わらない」と品質へのこだわりを強調する。
そんな同社が今回、新たにARM Cortex-R5搭載マイコンである「Traveoファミリ」として、40nm eCT(Embedded Charge Trap)プロセスを採用したシリーズをメータクラスタ向けにメモリとパッケージが異なる4シリーズ(S6J331x/332x/333x/334x)、ボディ/ゲートウェイ向けに1シリーズ(S6J335x)を追加した。いずれも動作周波数は最大240MHzかつCAN FDも6chないし8ch対応するほか、イーサネットAVBやMediaLBにも対応し、最大4MBのフラッシュメモリを搭載する。
40nm eCTは、台湾UMCと共同で開発したプロセス技術(55nmプロセスまでは富士通セミコンダクタの三重工場)で、0ウェイトで8nsのランダムアクセスを実現しており、100MHzであれば待ち時間なしでフラッシュメモリからデータの読み出しが可能になるという。また、同プロセスはSpanson時代から開発を続けてきたMirrorBit技術としては第6世代にあたり、保証動作温度範囲-40℃~+125℃(+125℃はS6J335xの180MHz動作時、240MHz駆動時およびS6J331x/332x/333x/334xは+105℃)ながら、データ保持期間20年を実現しているという。
また、近年、自動車のエレクトロニクス化の進展によりセキュリティが重視されるようになってきており、同社もそれを意識。「自動車の基幹部分を担う製品を提供するものとして、この部分は非常に重要視している」として、認証と暗号化をサポートしたセキュリティ技術を要件として必ず含む形での開発を進めているとした。
さらにマイコンのほかにも、策定が進むLINの置き換えを目指した次世代インタフェース「CXPI(Clock Extension Pripheral Interface)」向けトランシーバ「S6BT111A」の開発も進んでいるとするほか、アイドリングストップからの復帰時の電圧低下時でも稼動を続けられるブーストコンバータを搭載したPMICやLED照明向けドライバなどの開発も進めており、マイコン製品を含め、2016年中のサンプル出荷ないし量産開始を予定しているという。
なおサンプル価格は40nmプロセスマイコンがいずれも15ドル程度、CXPIトランシーバが4ドル、PMICはマイコンとの最適化が図られているため、基本的にはセットでの販売だが、単体での提供も行っていくとしている。