トヨタ自動車は1月5日、米国に設立した人工知能技術の研究・開発を行う新会社の「Toyota Research Institute(TRI)」の体制および進捗状況を公表した。TRIのCEOであるギル・プラット(Gill A. Pratt)氏が米国ラスベガスで開催されている「CES 2016」にて説明した。

CESプレスカンファレンスでのギル・プラットCEO

TRIは1月、米国カリフォルニア州パロ・アルトおよび、マサチューセッツ州ケンブリッジにそれぞれ拠点を設ける。トヨタは昨年9月、スタンフォード大学およびマサチューセッツ工科大学(MIT)との人工知能の連携研究を行うと公表したが、今回の拠点はそれぞれ両大学の近くに位置しているため、TRIと両大学との結びつきがさらに強いものになると考えているという。下表は現時点における、TRIに参画する主なメンバー、研究者。

氏名 TRIでの担当・専門領域 説明
エリック・クロトコフ COO 元DARPAプログラムマネジャー
岡島博司 エグゼクティブ・リエゾン・オフィサー トヨタ 技術統括部 主査
ラリー・ジャッケル 機器学習 元ベル研究所部門長、元DARPAプログラムマネジャー
ジェームス・カフナー クラウドコンピューティング カーネギーメロン大学教授、元Googleロボティクス部門長
ラス・テッドレイク シミュレーション、制御 MIT助教授と兼任
ジョン・レオナルド 自動運転 MIT教授と兼任
ブライアン・ストーリー 計算科学 オーリン工科大学教授と兼任

また、TRIでの研究推進にあたり、さまざまな分野の外部有識者からの助言を受けるための組織として、アドバイザリー・ボードを設置。下表は現時点での主なメンバー。

氏名 説明
ジョン・ルース:議長 元駐日アメリカ合衆国大使、現Geodesic Capital ゼネラル・パートナーなど
ロドニー・ブルックス:副議長 元MITコンピューター科学・人工知能研究所所長、現Rethink Robotics創設者・会長兼チーフ・テクノロジー・オフィサーなど
マーク・ベニオフ Salesforce.com CEO
リチャード・ダンズィグ 元アメリカ合衆国海軍長官
ブラン・フェレン 元Walt Disney ImagineeringのR&D部門長、現Applied Mindsチーフ・クリエイティブ・オフィサー
菊池昇(予定) ミシガン大学名誉教授、豊田中央研究所所長、Toyota Research Institute of North America(TRINA)所長
フェイフェイ・リ スタンフォード人工知能研究所所長
ダニエラ・ラス MITコンピューター科学・人工知能研究所所長

TRIメンバー

TRIは当面、5年間で約10億ドルの予算のもと主に4つの目標を掲げ、人工知能研究に取り組んでいく。具体的には(1)「事故を起こさないクルマ」をつくるという究極の目標に向け、クルマの安全性を向上させるとともに、(2)これまで以上に幅広い層の方々に運転の機会を提供できるよう、クルマをより利用しやすいものにすべく、尽力していく。また、(3)モビリティ技術を活用した屋内用ロボットの開発に取り組むほか、(4)人工知能や機械学習の知見を利用し、科学的・原理的な研究を加速させることを目指す。

一方、スタンフォード大学およびMITとの連携研究についても、具体的な研究を始めるべく合計約30のプロジェクトを立ち上げるなど、着実に歩みを進めている。

TRIのプラットCEOは「従来、ハードウェアがモビリティ技術の向上には最も重要な要素であったが、今日ではソフトウェアやデータの重要性が徐々に増している。コンピューター科学やロボット開発の先端で長年の経験のあるメンバーがTRIに参画するが、それでもわれわれはまだスタート地点に立ったばかりだ。トヨタが今回の案件にここまで力を入れているのは、安全で信頼に足る自動運転技術の開発を非常に重要視しているからである。生活のさまざまなシーンにおいて、すべての人々により良いモビリティをご提供することで、より豊かな暮らしの実現に貢献することができると確信している」と語った。