SC15の論文の採択率は20%強で、SCで論文を通すのは、なかなか、大変である。その関門を通って、今回のSC15で発表された日本の大学の論文発表は2件である。なお、論文の著者は全員が1つの機関の人だけという方が珍しく、世界中のあちこちの機関の人が1つの論文の共著者となっているという論文の方が多い。このため、何が日本の大学の論文かという明確な基準はなく、多分に筆者の恣意的な判断に依っている。
SC15で採択された2件の論文の内の1件は、電気通信大学(電通大)の三輪准教授と東京大学(東大)の中村教授の共著の「Profile-Based Power Shifting in Interconnection Networks with On/Off Links」という論文で、もう1件は、九州大学(九大)の稲富准教授が第1著者で、同大、アリゾナ大学、ローレンスリバモア研究所、東大、京都大学(京大)、富士通の人たちが共著者に加わっている「Analyzing and Mitigating the Impact of Manufacturing Variability in Power-Constrained Supercomputing」という論文である。 主に若い研究者の研究発表の場として設けられているポスター発表は、
- RIST(高度情報科学技術研究機構)と北海道大学(北大):GPU Acceleration of a Non-Hydrostatic Ocean Model Using a Mixed Precision Multigrid Preconditioned Conjugate Gradient Method
- 東北大:An Approach to the Highest Efficiency of the HPCG Benchmark on the SX-ACE Supercomputer
- A Real-Time Tsunami Inundation Forecast System for Tsunami Disaster Prevention and Mitigation
- 会津大学:Parallelization of Tsunami Simulation on CPU, GPU and FPGAs
- 筑波大学:Large-Scale MO Calculation with GPU-accelerated FMO Program
- 東大:Scalable and Highly SIMD-Vectorized Molecular Dynamics Simulation Involving Multiple Bubble Nuclei
- Development of Explicit Moving Particle Simulation Framework and Zoom-Up Tsunami Analysis System
- 東工大:Out-of-Core Sorting Acceleration using GPU and Flash NVM
- Design and Modelling of Cloud-Based Burst Buffers
- Multi-Level Blocking Optimization for Fast Sparse Matrix Vector Multiplication on GPUs
- Design of a NVRAM Specialized Degree Aware Dynamic Graph Data Structure
- 電通大:Memory Hotplug for Energy Savings of HPC systems
大学ではないが、「JAEA Optimization of Stencil-Based Fusion Kernels on Tera-Flops Many-Core Architectures」を含めると、全体では日本の発表は13ポスターであった。中では4件のポスター発表を行った東工大が最多で、すべてのポスター発表に松岡先生の名前が載っている。
SC15での日本の大学のブースは15(ただし、東京大学は3つのグループがそれぞれブースを出展)であった。なお、埼玉大学のブースは会場中央に近い良い場所にあり、会場の端に押し込められた他の日本の大学のブースと離れた場所であったために見逃してしまった。埼玉大学の皆様、申し訳ない。また、SC15では埼玉大学の隣にVR Study Meetingのブースがあった。前回の展示では、VR Study Meetingは埼玉工大、埼玉大、女子美大、東海大、中央大のチームと書かれており、日本の大学の展示に含めるべきであったが見落とした。
大部分の大学は前回もブースを構えた常連であるが、前述のように、1件のポスター発表を行っている会津大学も過去に3回展示を行っている。初出時に、新たに参加と記述してしまったが、前回、展示がなかったので、勘違いしてしまった。
各大学の展示ブース
今回から初参加の会津大学は平成5年に創立された県立の4年制大学で、コンピュータ理工学専門でその他の学科はないという珍しい大学である。当初は学部だけであったが、その後、平成9年に修士課程、平成11年に博士課程を開設している。
日本の大学では最大の600平方フィートのブースを構えるOakleaf Kashiwaアライアンス。
東大の平木研究室も毎年ブースを構える常連である。平木研はData Reservoirというプロジェクトで、遠距離の超高速通信を可能にする技術を研究している。今回は、SC15の会場に2台のPCを設置し、テキサス州オースチンから東京までの100Gbit/sの回線を使い、東京折り返しで2台のPC間でのデータ伝送実験を行った。
通常のTCPを用いると、データ伝送速度は29Gbit/s(理論値の97.7%)であったが、超高速通信のために開発したLong Fat TCPを使うと73Gbit/sのデータ伝送が行えることを実証した。これは単一のTCP通信によるデータ伝送速度としては世界記録だそうである。
日本の大学で発表ポスター数最大、TSUBAME-KFCのK80 GPUへのアップグレードでGreen500 2位を獲得した東工大は、Oakleaf Kashiwa Allianceと並ぶ600平方フィートのブースを構えていた。
SC15で論文が採択された九州大学のブースである。椅子に座っている黒い服の人物が、論文の第1著者の稲富准教授。