カスペルスキーは12月25日、導入が進む通信の暗号化について、同社のブログ「Kaspersky Daily」で解説している。
各国の政府などは、テロなどの大事件が起きた際に解決の糸口を探すため、特例として国家機関や警察官などが事件に関連する通信内容を傍受できる必要があると提唱している。ワシントンポスト紙は、政府機関などが通信を傍受できる特権に肯定的な立場を取り、その特権を「Golden Key(黄金の鍵)」と呼んでいる。同紙の記事では、過去に誘拐などの犯罪事件で黄金の鍵システムが導入されていないために捜査官が捜索に行き詰った事例をいくつか紹介している。また、Google、Apple、Facebook、TelegramなどのIT企業は黄金の鍵を政府に提供すべきとも示している。
ブログでは、カスペルスキーが黄金の鍵について否定的な立場であることが示されている。システムには穴があり、危険性が高いため「このアイデアはマスターキーにアクセスできるのはTSAのみであり、スーツケースの中身を盗もうとする犯罪者は何か別の手段で錠前破りをしなければならないという前提で成り立っている」と指摘している。
一方で、このTSAは「黄金の鍵を使った失敗例」の代表だとしてカスペルスキーは警鐘を鳴らす。TSAロックは、個人のスーツケースがTSA承認済みの錠前で施錠してあるものであれば、必要に応じて検察官が解錠できる。検察官は、10種類あるマスターキーのすべてを試して解錠する。
しかし近年、TSAキーの写真と3Dデータがオンラインに流出し、中国のオンライン市場などでTSAキーの全セットが販売され、誰でも入手できる事態となった。カスペルスキーでは、このような事態になった場合は事態を収拾するため有効策はないとしている。
警察や政府などが黄金の鍵を手にすることは、同時にサイバー犯罪者が鍵を手にする可能性は少なくない。カスペルスキーでは「善人が必要な情報を持ち、悪人は持たないという前提のシステムは遅かれ早かれ破綻する」と見解を示している。