東邦テナックスは12月24日、熱可塑性樹脂を使用した難燃かつ高強度・高剛性の織物プリプレグを開発し、2016年1月より少量サンプルの有償販売を開始すると発表した。

現在、炭素繊維強化プラスチックには、強度の面からエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が用いられており、一般的な工法であるオートクレーブ成形は、炭素繊維シートに熱硬化性樹脂を含浸させたシート(プリプレグ)を金型上に積層させ、バッグで覆った後に真空吸引と加熱により成形している。こうした熱硬化性プリプレグを使用する場合、耐衝撃性に乏しく、成形時間を要するため、量産には不向きとされている。また、熱硬化性プリプレグは、一般に冷蔵保管が必要となる。

一方、熱可塑性樹脂を用いるプリプレグも開発されているが、一般に熱可塑性樹脂は粘度が高く、樹脂の含浸が難しい。また、炭素繊維同士の交点が熱可塑性樹脂の含浸を妨げるため、ロール状の織物プリプレグを開発するのは困難とされてきた。

今回開発された熱可塑性の織物プリプレグは、樹脂の含浸性が高いため、体積当たりの炭素繊維量を55%以上にまで高めることができる。また、織物プリプレグでありながら、幅1m、長さ100mのロール状での供給が可能となっている。また、熱可塑性のスーパーエンプラを使用することにより、常温での長期間保管が可能。

加工メーカーの協力により、プレス成形機を用いた量産成形技術も確立しており、最短4分程度のタクトタイムで成形できるため、月産数千個の炭素繊維強化プラスチック製造が可能となる。

同社はすでに、IT家電、医療機器、スポーツ用品など向けてこの織物プリプレグを使用した炭素繊維強化プラスチックの開発を進めているが、今回、サンプルの有償販売を開始することにより、産業機器や航空機部材用途など、さらに幅広い用途へと展開していきたいとしている。

ロール状の織物プリプレグとプリプレグを利用した筐体サンプル