東京大学は12月4日、南米・チリに設置されているアルマ望遠鏡による観測から、115億光年彼方に位置する「原始グレートウォール」と呼ばれる天体の中心に、近くの宇宙に存在する巨大銀河の昔の姿だと考えられているモンスター銀河が9個集まっている様子を捉えることに成功したと発表した。
同成果は同大学大学院理学系研究科の梅畑豪紀 日本学術振興会特別研究員、田村陽一 助教、河野孝太郎 教授を中心とする国際研究チームによるもので、12月4日に「The Astrophysical Journal Letters 」オンライン版に掲載された。
近くの宇宙では銀河は集まっている部分と空洞の部分が入り交じった蜘蛛の巣状の分布をしていることが知られており、この大規模構造は長さ5億光年を越える宇宙最大の天体・グレートウォールとして知られている。初期の宇宙においても、同じくらいの大きさを持った若い銀河の群れが見つかっており、これらはグレートウォールの先祖である原始グレートウォールだと考えられている。
今回の研究では、みずがめ座の一角にあるSSA22と呼ばれる天域に着目。この方向には115億光年彼方に原始グレートウォールだと考えられている若い銀河の大集団が発見されており、研究チームはこの原始グレートウォールについてモンスター銀河の捜索を行い、合計9個のモンスター銀河が原始グレートウォールの内部に群れ集まって存在していることを確認した。各モンスター銀河は天の川銀河の数百倍から1000倍もの勢いで星を形成しており、やがて巨大銀河へと進化すると考えられるという。
今回の成果について同研究グループは、原始グレートウォールが巨大銀河の誕生を支える母体であることを示すものであり、モンスター銀河の形成過程やその後の進化の解明につながることが期待されるとしている。