セールスフォース・ドットコムは12月3日・4日、年次イベント「Salesforce World Tour Tokyo」を開催した。年々拡大している同イベントだが、今年は、初日は両国国技館で、2日目はザ・プリンスパークタワー東京と虎ノ門ヒルズフォーラムと、3つの会場での開催となった。
初日の基調講演のテーマは「Welcome to the Age of the Customer "顧客の時代へ"」 、顧客を中心に据えたビジネスの重要性を訴えるとともに、ユーザー企業の成功事例や技術動向について説明した。
共同創業者であるParker Harris氏は「日本は米国以外に設立した2番目のオフィス。このたび、三菱重工業やLIXILとIoT関連のビジネスについて新たな発表を行ったが、安倍政権が進める地方創生の一環である『ふるさとテレワーク推進のための地域実証事業』にも参加している」として、同社の和歌山県白浜町における「ふるさとテレワーク」に関する取り組みを紹介した。
同社は今年7月から和歌山県白浜町にクラウドサービスを有効活用した戦略的テレワーク拠点「Salesforce Village」を設置し、本社機能の一部を移転して業務を遂行する新しいテレワークモデルの効果検証を実施している。
基調講演には、白浜町町長である井澗誠氏も登壇し、「人口減少、少子高齢化といった課題を解決するため、ふるさとテレワーク事業に参加した。今後、ITと観光を融合することで、イノベーションを起こして行きたい」と語った。
東京で行っている業務が白浜町でも自然に行えながら、東京とは異なる自然が豊かな環境で暮らすことができるとして、白浜町で働く社員の満足度も高いという。また、同社は白浜町に対し、行政情報などを提供するスマートフォンアプリを提供しているが、ハリス氏は「クラウドをベースとしているため、別な町でも迅速に展開できる」と述べた。
Salesforce.comのプレジデント兼バイスチェアマンのキース・ブロック氏は、「Uberは車を1台も所有していないにもかかわらず、技術により大きなイノベーションを起こすことで、創業から5年で時価総額500億ドルを築き上げた。こうしたビジネスチャンスは他の業界にもある」として、これからの企業の成功のカギは「モバイルやソーシャルなどを活用して、新しいカタチで顧客とつながること」と説明した。そして、スマートフォンで業務を遂行することが当たり前になりつつある今日、「One to Oneのカスタマージャーニーを構築することが重要」とした。
しかし実際のところ、分析されている顧客に関するデータは1%に満たず、顧客の77%が「企業やブランドとつながっていない」という意識を持っているという。
キース氏はこうした状況を解消するための策について、「顧客が宇宙の中心にいると考え、カスタマーカンパニーなること。われわれのCustomer Success Platformを使えば、今までにはないカタチで顧客とつながることができる」と説明した。「顧客とのギャップを解消した会社にはメリットがもたらされている」(キース氏)
ユーザー企業の成功事例としては、NTTコミュニケーションズとトヨタ自動織機が紹介された。NTTコミュニケーションズでは、グローバルセールス6000人、コールセンターのエージェント3200人がセールスフォースのサービスを活用している。
NTTコミュニケーションズ 代表取締役社長の庄司哲也氏は、セールスフォースがどのように役立っているかという質問に対し、「今では、営業力を強化するために不可欠なツールとなっている。また、人工知能に対応したセールスフォースのサービスによって、的確なサービスを提供していきたい」と答えた。
顧客のニーズをつかんでビジネスに生かしていくマーケティングは、2015年に注目が高まった技術の1つと言える。厳しい競争を強いられる企業にとって、顧客のニーズを的確につかみ、それにこたえる製品やサービスを提供できるかどうかが市場で生き残るための術となりつつある。今年のSalesforce World Tourは、顧客にフォーカスしたい企業にとってさまざまなヒントを提供するイベントだったと言える。