東北大学は11月26日、難治疾患であるミトコンドリア病の進行を抑える効果がある新規化合物を開発したと発表した。
同成果は同大学大学院医学系研究科病態液性制御学分野および医工学研究科分子病態医工学分野の阿部高明 教授、岡山理科大学の林謙一郎 教授、自治医科大学の小坂仁 教授、筑波大学の中田和人 教授らの研究グループによるもので、11月25日に米国腎臓学会学術誌「Journal of the American Society of Nephrology」電子版に掲載された。
ミトコンドリア病は、生体の生存と維持に必要なエネルギーとして使用される化学物質・ATPを産生するミトコンドリアの機能異常により、ATPが枯渇してしまう遺伝性の希少疾患で、国内では約700人が報告されている。幼児期から神経・筋、循環器、代謝系、腎泌尿器系、血液系、視覚系、内分泌系、消化器系に発症し、病気の進行が早いため速やかに治療する必要があるが、現時点では有効な治療法がなく、対症療法が行われている。
同研究では、腎臓病患者の血液中にATP産生亢進作用があるインドール化合物が含まれていることを確認。インドール化合物の誘導体ライブラリーをスクリーニングし、新規化合物・MA-5を発見した。実験では、MA-5はミトコンドリア病患者由来の培養細胞の細胞死を抑制し、ミトコンドリア病態マウスモデルの心臓・腎臓のミトコンドリア呼吸機能を改善、生存率を上昇させたという。現在、MA-5は安全性試験が行われており、安全性が確認され次第、ミトコンドリア病患者での臨床治験に入る予定だ。
また、ミトコンドリア機能異常は筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、アルツハイマー病などの神経変性疾患などに関係しているため、同研究グループはMA-5はこれらの疾患に対しても治療薬となる可能性があるとしている。