東京医科歯科大学(TMDU)は11月20日、座薬として投与可能な核酸医薬を開発したと発表した。
同成果は同大学大学院医歯学総合研究科脳神経病態学分野の横田隆徳教授、大阪大谷大学薬学部薬剤学講座の村上正裕教授らの研究グループによるもので、11月23日(現地時間)に国際科学誌「Scientific Reports」オンライン版に掲載された。
アンチセンス核酸、siRNAなどの核酸医薬を用いた遺伝子治療は、細胞内のあらゆる遺伝子を制御できる汎用性の高さから、がんや神経疾患へなど、治療困難とされてきたさまざまな疾患への臨床応用が期待されている。現在、核酸医薬は注射薬しか開発されておらず、長期投与が必要な疾患に対する投与方法としての限界が指摘されていた。
同研究グループは今回、ビタミンEを結合させたsiRNAと脂肪酸や界面活性剤で作製した混合ミセルを組み合わせることで、独自に脂質ナノパーティクルを形成。このナノパーティクルを、食後にマウスの大腸に投与することで、ビタミンE結合siRNAを肝臓に到達させ、標的遺伝子の発現を抑制することに成功した。腸管投与が可能な拡散医薬は世界初だという。
同手法は食事中のビタミンEが腸管で吸収されて肝臓にデリバリーされる生理的な経路を利用しており、体内で作られるリポ蛋白の一種をベクターとして用いるため、副作用のない安全で簡便な投与が可能となる。また、同研究グループは、既存の大腸デリバリーの技術と組み合わせることで、経口投与可能な核酸医薬を用いた治療の実現につながることが期待されるとしている。