シトリックス・システムズ・ジャパンは11月17日、「ワークスタイルとITに関する意識調査2015」の結果を発表した。調査結果から、テレワークを日常的に実践している人は、その効果をおおむねポジティブに捉え、現状維持または拡大したい意向を示しているが、そのためには制度やIT環境のサポートのほかに評価制度の重要性も関連するとしている。
同調査は同社が調査会社であるアイ・ティ・アールを通じ、従業員数20人以上の国内企業に勤務してテレワークを週当たり3時間以上実践している個人を対象として、2015年9月上旬に実施したもの。有効回答数は234人。
テレワークの効果を尋ねると、全ての項目で 「向上」が 「低下」を上回る結果となった。特に 「勤務時間当たりの業務処理量」(29.9%)と 「業務に対する集中力」(25.2%)では、全体の25%以上の人がテレワークの実践により大いに向上したと回答している。また、「週15~30時間未満」のテレワーク実践者が、最もその効果を実感している結果となった。
一方、テレワークを実践した上で感じた問題では、 「仕事とプライベートの境が無くなる」(28.2%)や「トータルの労働時間が増加した」(21.8%)が多く、テレワークの効果を実感しながらも、仕事の切り上げや仕事と生活の線引きに課題を感じている人が多いという実態が判明した。
また、全体の8割が、テレワークの効果や問題を理解した上で現状維持または拡大の意向を示しており、制度やIT環境に加え、評価制度が従事者のテレワークの継続および拡大意欲と相関していると同社は見ている。
テレワークの効果の実感度合いを制度面およびIT環境面から見たところ、制度面では会社の制度にテレワークが組み込まれている人の効果指数が最も高く、IT環境では会社の自席とほぼ同じIT環境が提供されている人の効果指数が最も高い。テレワークの効果を最大にするには、制度およびIT環境における会社からのサポートが重要だと同社は指摘する。
テレワーク時のデバイス環境は依然としてPCが主力であり、スマートデバイスとの併用も含めると8割を超える。スマートデバイスのみの利用者は18.6%、PCとの併用者は23.8%であり、スマートデバイスは中核的なデバイスとはなり得ていないものの、PCを補完する効果をもたらしていると同社は見る。デバイスの利用状況もテレワークの効果の実感度合いに関連し、スマートデバイスのみの利用者は、PCとスマートデバイスの併用者と比べて全体的に効果の実感が低くなっている。さらに、3つ以上のコミュニケーションツールを利用者がテレワークの効果をより実感していることから、多様なコミュニケーションツールを利用可能にすることが、テレワークの効果を高める上で有効な施策だという。
テレワークの継続または拡大の意欲を示した人は全体の約8割を占め、「週15~30時間未満」が35.6%、「ほぼフルタイム」が31.3%と、従事時間が長いほどテレワーク比率の上昇に意欲を示している。また、会社が制度を正式に採用し自主的な希望で従事している人では37.6%、オフィス(自席)とほぼ同じ環境を提供されている人では43.8%が比率の上昇に意欲を示しており、制度やIT環境が従事者の今後のテレワークへの拡大意欲に影響を与えていると同社は見る。
さらに、現在の業績評価の実態に対する意識が今後のテレワークの継続および拡大の意向に大きく関連するという。業績目標が定量的に定義され成果の達成度合いが明確な人の56.9%が「非常に有効なので、テレワークの比率をもっと高めたい」と回答しており、「条件が整うならば、テレワークの比率を増やしてもよい」(27.7%)を合わせると、8割を超える人がテレワークの継続または拡大の意向を示している。
アイ・ティ・アールのシニア・アナリスト 舘野真人氏は、「企業において、テレワーク導入の可否にまつわる議論が活発化しているが、問題はそうした議論がテレワークをほとんど実践したことのない人々によってなされる傾向が強いということ。そこで、今回の調査では、日常的に(週当たり3時間以上)テレワークを実践している人に対象を絞り込んでその意識を調査した。その結果、テレワークの実践者の多くが、その効果をポジティブに受け止めていることが明らかとなった。とりわけ生産性にまつわる効果の実感度合いは高く、これからの人口減少時代においてテレワークが働き方の有効な選択肢となりうることがあらためて示されたと言える。テレワーク推進のための具体的な支援策としては、制度面では自由意志を尊重した就業制度と公正な業績評価制度の整備、技術面では場所を問わずに利用できるデスクトップPC環境とコミュニケーション環境の整備の優先度が高いと見られる」とコメントした。