富士通研究所は11月18日、電子機器などの生産ラインにおける部品実装や外観の不良をカメラ画像から自動判定する画像検査プログラムの自動生成技術を開発したと発表した。

生産ラインにおける検査工程は、部品の実装有無や位置ズレの確認、外観不良がないかどうかの判定を行うが、これらの検査項目は、製品仕様により多様で、カメラによる自動検査ではさまざまな部品形状への認識や画像特徴による自動判定が求められているという。

そこで、今回、従来技術におけるプログラムの生成方法と評価方法を改良し、検査工程の画像処理プログラムを自動生成する技術を開発。富士通のAI技術「Zinrai」の機械学習、画像処理、最適化などを用いた新技術は、実装部品の位置ズレ検査と良・不良判定検査に対応できる。

具体的には、任意図形を認識するプログラムとして、部品画像と基板全体の画像の2つを入力し、それぞれ異なる画像変換をして照合させることで類似度分布を出力するプログラム構造を開発した。

この構造を用いて遺伝的アルゴリズムと呼ばれる機械学習により、照合時のパラメーターを最適化する。これにより、認識したい部品画像と実際の装置が撮影した基板全体の画像に対する部品の正解位置をサンプルデータとして登録するだけで、照明変化の影響に強く、類似形状の部品が混在していても正しく認識するプログラムの自動生成が可能になり、高精度な位置ズレ検査を実現する。

任意図形認識のプログラム構造と最適化の仕組み

また、さまざまな画像変換によって明るさやコントラスト、エッジの向きなどの特徴量を抽出し、そのデータから良品に適合したモデルを生成。事前に学習させた良品画像と不良品画像に対する判定結果と特徴量の分布による分離度を評価基準にして、遺伝的アルゴリズムによりモデルを最適化することで、高性能な画像の判定機能(分類器)を自動生成する。

良・不良判定処理のプログラム構造と最適化の仕組み

実際の生産ラインにおける部品実装検査の画像処理プログラムに対する社内評価では、約2時間の学習で、生産ラインのプログラムに関する専門家が開発したものと同性能のプログラムを自動生成できることを確認したという。これにより、検査プログラムの開発時間を従来の約5分の1に削減。

同技術により、生産ラインの早期立ち上げや仕様変更時の迅速なシステム修正が可能となり、生産ラインの安定稼働が期待できるとしている。