SAPジャパンは11月12日、主力製品となるビジネススイート「SAP S/4 HANA」の最新版「SAP S/4 HANA Enterprise Management」を発表した。これまでS/4 HANAで提供されてきた会計機能「Simple Finance」に加えて、営業、サービスといった9の新しいビジネスプロセスを加えるものとなる。
グローバルではスペイン・バルセロナで開催中の「SAP Tech Ed」で前日に発表しており、SAPジャパンが同日に都内で開催した「SAP Forum 2015 Tokyo」において日本における正式発表となった。
S/4 HANA発表時、ビジネスプロセスとして会計機能「Simple Finance」が提供され、これ以外の領域については"Simple Logistics"という開発コードで開発が進んでいた。SAP S/4 HANA Enterprise Managementはこれを製品化したもので、具体的には、営業、サービス、マーケティング、コマース、調達、製造、サプライチェーン、製造、人事、サービス、資産管理、研究開発と「あらゆるビジネスプロセスをカバーする」という。
S/4 HANAは、高速なインメモリ技術HANAプラットフォームを利用し、トランザクション系だけでなく、プランニング、予測、シュミレーション、分析が単一のシステムで実現できる。SAPはこれをデジタルコアと位置付けており、最新版ではこれに各業務向けのSAPポートフォリオを結びつける。企業はこれを利用してデジタル化をエンドツーエンドで実現し、リアルタイムですべてのバリューチェーンを相互接続する。
S/4 HANA Enterprise Managementはオンプレミス版とクラウド版で展開する。オンプレミス版は同日に提供を開始し、パブリッククラウド版は今後の展開となるが具体的な時期は未定だという。
合わせて、S/4 HANA Enterprise Managementソリューションに含まれる10種類の業種別ソリューションを「SAP S/4 HANA Lines-of-Business」としても展開する。これらのLoBソリューションは、スタンドアローンのソリューションとしても利用できるという。また、Ariba、Fieldglass、ConcurといったSAPのビジネスネットワークとの接続も可能となる。
発表会では、SAPエンタープライズアプリケーションおよびユーザーエクスペリエンス担当グローバルバイスプレジデントのSimo Said氏とSAPジャパンでインダストリークラウド事業統括本部シニアディレクターを務める大我 猛氏がS/4 HANAのこれまでの経過について説明した。
SAPは10月、S/4 HANAの採用企業がグローバルで1300社に達したことを発表しているが、大我氏によると、日本での導入企業は50社以上にのぼるという。この中には、野村総合研究所(NRI)、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、インテージホールディングスなどが含まれる。S/4 HANAでは「早期顧客プログラム」を展開しているが、今回のS/4 HANA Enterprise Managementでは、世界20社、日本からはNRIなど3社が参加しているとのことだ。
SAPエンタープライズアプリケーションおよびユーザーエクスペリエンス担当グローバルバイスプレジデントのSimo Said氏。「市場に崩壊が起きており、デジタル化なしには生き残れないと理解している」とし、S/4 HANAでは障害となっている複雑化をシンプルにすることでこのような顧客の課題に対応するという |
SAPジャパンでインダストリークラウド事業統括本部シニアディレクターの大我 猛氏 |
また同時に、SAP S/4 HANA Enterprise Managementへの移行と導入の支援サービスも発表した。戦略・プランニング、実行、運用・改善と導入、運用、改善とすべてのフェーズをカバーするものとなるが、大我氏は「日本の顧客はアドオンが多く、既存顧客の移行は課題」という。ここでは、導入前と後でどう変わるのかを見せてバリューを示すなどして進めていく。この支援サービスはSAPコンサル部隊が、顧客とパートナーの双方に向けて、同日より提供を開始している。
大我氏はHANAのパートナーエコシステムの成長にも触れ、パートナー企業向けの取り組みとなる「SAP S/4 HANAコンソーシアム」では参加企業が22社に増え、全社が自社のテンプレートのHANA化が完了したと報告した。