アメリカン・エキスプレス・インターナショナルは11月12日、日本の中堅企業を対象とする「中堅企業調査レポート2015」を発表した。

同レポートは、同社がカンター・ジャパンの協力を受けて、年間売上規模が約5億円以上200億円未満の企業の経営者や財務 ・経理責任者などを対象に2015年7月から8月にかけて実施した調査による。回答者数は、定量調査が全国の235人、定性調査が首都圏の10人。

「中堅企業調査レポート2015」のサマリー

会社の成長ステージを「創業期」「成長期」「安定期」「転換期(次の事業戦略を実行へ移すステージ)」の4種類と定義して実感を尋ねたところ、転換期との回答が48%で半数近くに上り、28%でこれに続いた安定期と合わせると76%に達した。日本の中堅企業は全体的に成熟し、その多くが変化を必要としていると同社は分析する。

自社の成長ステージ

3~5年前から現在に至る景況感を見ると、「以前より改善」が44%で最多だった半面、「以前と変わらない」(34%)と「以前より悪化」(23%)を合わせると57%に達し、日本経済全体では回復基調にあると言われる中で、中堅企業では改善の実感が必ずしも強くはないと同社は見る。

さらに、今後3~5年間の見通しは「現状と変わらない」が42%、「現状より悪化」が20%であり、5年後の2020年に向けて多くのビジネスチャンスが期待される状況ながら、中堅企業の多くは楽観視していないのが実情だという。

景況感の比較

今後3~5年間の自社へのリスクを複数回答で尋ねたところ、具体的なリスクとしては「国内の既存競合会社」が45%と最も多く、「国内経済状況」が40%で続き、国内市場での生き残りへの厳しい実感が伺える。これらのリスクについて、80%が「非常に」または「ある程度」重大なリスクだと回答しており、強い危機感が浮かび上がったとしている。

なお、2020年に開催予定の東京五輪への期待と共に、その後の反動を危惧する回答も建設業・不動産業・物流関連の企業からあったという。

今後3~5年間の自社へのリスク

中堅企業は将来を楽観視はしていないが、どのように勝ち残っていくのかを尋ねると、自社の強みや競争力への自信を持っていると共に、積極的にリスクを取る姿勢が見られたという。

自社の競争優位性では「製品やサービスの質、差別化」が52%で最も多く、以下「スキルや能力を持った人材」(38%)、「カスタマーサービス」(26%)が続く。全体の60%が「同業界における競争優位性がある」と回答しており、また76%が今後3~5年間「その競争優位性を維持できる」と感じているとのこと。

市場を見る目は決して楽観的ではないものの、事業の核となる商品・サービスには自信を持っており、それを支えるコアな人材がいる企業が多いと同社は分析する。

自社の強み

一方、「業務プロセス・システム・オペレーションの効率化」に強みを持っているとの回答は19%、「テクノロジーの活用」は18%、「マーケティング・販売チャネル」は16%とそれぞれ比較的少数に留まっている。IT化やマーケティングなどの仕組み作りまでには手が回っておらず、中堅企業に共通する課題になっていると同社は見ている。

ビジネスに関する取り組みを決断する際の姿勢を問うと、「進んでリスクを取る」が17%、「多少のリスクは取る」が46%であり、全体の6割以上の財務責任者で積極的にリスクを取る姿勢が見られたという。

事業を継続的に成長させるための将来を見据えた戦略に対する注力度を尋ねたところ、「非常に増えている」(18%)、「増えている」(57%)となり、全体の75%に上ることから、中堅企業にとって中長期的な取り組みの重要性が高いと同社は分析している。

過去1年間の取り組みでは「組織改革」が34%と最多であり、以下「取扱製品・サービスの多様化」(31%)、「新規事業への参入」(29%)、「次世代幹部の登用」(29%)の順だった。中長期的な優先事項は、組織・人事に関する取り組みと事業に関する取り組みに二分できると同社は分析する。

また、76%の中堅企業が安定期または転換期になる中で、「代替わり・世代継承」が課題になっていると同社は推測している。回答企業の社長では「創業者2代目以降」が32%と最多、「創業者1代目」が29%で続き、半数以上がオーナーまたはその親族で占められているという。

今後1年間で取り組みたい将来を見据えた戦略を尋ねると、「次世代幹部の登用」が31%で最も多い。以下「組織改革」(30%)、「取扱製品・サービスの多様化」(29%)、「新規事業への参入」(26%)と続き、事業継承を含めた組織作りに対する取り組みへの意欲が高いと同社は見ている。

今後1年間の戦略的取り組み