「AED」という名前は聞いたことがあるだろうが、実際に使い方を知っている人はどの程度いるだろうか?
直前まで元気に過ごしていたのに、突然心肺機能が停止して倒れてしまう、そうした「心臓突然死」の症例が実は年間で数多く発生している。消防庁によると平成25年度に心原性(心臓に原因があるもの)の心肺機能停止症例数は7万5,397件とされている。このうち、心肺機能停止の時点を一般市民により目撃された件数は2万5,469件と報告されている。さらに、目撃した一般市民によりAEDが使用された件数は907件となっており、約3.5%の割合である。
救急車を呼んでから到着するまでの時間は全国平均8.5分とされており、その間に応急手当が行われなかった場合、1カ月後の傷病者の生存率は8.9%となっている。その間、胸骨圧迫の応急手当を行った場合は、1カ月後生存率は14.8%と約1.7倍高くなっている。さらに、AEDを使用して手当を行った場合は、1カ月後生存率は50.2%となり、手当が行われなかった場合と比較すると約5.6倍の命が救えることになっている。
キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は、2010年よりAED販売と合わせて心肺蘇生講習を実施してきた。同社は11月11日に、講習の受講者数が延べ10万人に達したことを発表。
発表当日に、小学館集英社プロダクションで行われた講習の模様をお届けする。
なぜAEDが重要なのか?
日本では、2004年に一般市民によるAEDの使用が許可され、公共施設や商業施設、学校など一般市民が利用する施設にもAEDが設置されるようになった。しかし、AED設置の普及に対して一般市民の使用は少なく、応急手当の普及が課題となっている。キヤノンMJグループでは、CSR行動計画に、AEDの普及とAEDによる心肺蘇生法の普及を掲げ、これまで講習を行ってきた。
ではなぜ、AEDが重要なのだろうか?
AEDは、心停止した患者に電気ショックを与え、蘇生させる医療機器。機器が自動的に心電図解析と電気ショックの必要有無を判断してくれる。
心停止とは、通常は規則正しいリズムで収縮が繰り返されている心臓が、何らかの衝撃などで心室細動を起こし、心臓のポンプ機能を消失してしまうことから発生する。この心室細動が起こっている時に、除細動(電気的な刺激)することが極めて重要となっており、除細動なしでの救命は可能性が低くなる。除細動は、心室細動を止める唯一の手段となっている。そのため、心停止した場合は、なるべく早くにAEDを使うことが求められてくる。
心停止は、睡眠時や入浴時、運動時など、さまざまな場面で、性別や年齢、病歴に関係なく発生している。つまり、"いつでも""誰でも"発生する可能性がある。
目の前で誰かが突然倒れてしまった時に、進んで助けられるよう、心肺蘇生の手順をみていこう。
心肺蘇生の手順
1.反応を確認する
倒れた人を発見した場合、まず反応の確認を行う。「もしもし、大丈夫ですか?」など、大きな声で呼びかけ、肩をたたいて意識があるかどうか、確認する。
2.119番通報とAEDの手配
周囲に人がいる場合、119番の通報とAEDの手配を依頼する。依頼する時は、なるべく的確に伝えた方がよい。例えば、「赤い洋服を着たそこの女性」など、「そこのあなた」というよりも的確に伝えた方が、混乱が生じない。
また、AEDの場所がどこにあるかわからない場合もあるので、状況によってはAEDの手配は複数人にお願いした方がよい。
3.呼吸を確認する
ポイントは、普段通りの呼吸をしているかどうか。あえぐような呼吸をしているような場合は「死戦期呼吸」の可能性があり、これは心停止直後に起こる症状である。判断に迷う場合はとにかく心肺蘇生を行うように意識しよう。
また、呼吸の確認は10秒以内に終えるようにすることも重要だ。心肺蘇生を行わないと、1分あたりで7~10%蘇生率が低下すると言われている。呼吸の確認は時間をかけずに行う必要がある。
4.胸骨圧迫を絶え間なく行う
胸の真ん中に両手を重ねて手の付け根を置き、肘を真っすぐ伸ばし、少なくとも100回/分以上の速さで強く(少なくとも5cm沈むくらいの力)圧迫を繰り返す。
5.AEDの準備
AEDが到着後は、まず電源をONにし、傷病者にパッドを貼り付ける。この時、心臓を挟むように貼り付ける。
6.電気ショックボタンを押す
AEDからはアナウンスが流れるため、そのアナウンスに従って、電気ボタンを押す。
7.胸骨圧迫を繰り返す
電気を流した後は、AEDから一定間隔で音が発せられるため、その音にあわせて胸骨圧迫を行う。AEDからアナウンスがあったら、再度電気ショックボタンを押す。
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なかなか文章だけでは、イメージがつきにくいだろう。AEDを使った講習サービスは、キヤノンMJをはじめ、さまざまな機関が提供している。AEDを使えば、たくさん救える命がある。いざという時に勇気を持って進み出ることができるように、使い方がわからない人は、ぜひこのような講習を受講してもらいたい。