11月10日、グーグルは新しい検索機能「Now on Tap」の日本国内におけるサービス提供を開始した。英語版は10月5日から提供されてきた機能で、日本は2言語目の対応となる。

グーグル 製品開発本部長 徳生裕人氏

「Now on Tap」は、スマートフォンで現在表示している画面内にあるテキストからキーワードを自動抽出し、検索を行う機能だ。ブラウザ、メール、LINEといったテキストを扱うアプリならグーグルが提供しているもの以外からでも利用可能で、対象となるワードが表示された画面でホームボタンを長押しするだけで利用できる。現在利用可能なのは、Android 6.0を搭載した端末のみだ。日本ではNexus端末のみということになる。

検索の手間を省くことを目的とした機能で、通常ならばキーワードをコピーして検索フォームにペーストしなければならなかったところを、ホームボタンの長押しだけで済ませることができることが大きな特徴だ。グーグル 製品開発本部長の徳生裕人氏は「これまでは調べたいことをグーグルに持って行かなければならなかった。これはグーグルを持ってくるイメージ」と語っている。

発表会では徳生氏と、グーグル ソフトウェアエンジニアの小倉章嗣氏によるデモンストレーションも行われた。ホームパーティの打ち合わせをハングアウトで行っているという設定での会話で、「フォンデュでもどう?」と表示されている状態でホームボタンを長押しすると「フォンデュ」をキーワードとして抽出し、検索した結果がカード表示される。

グーグル ソフトウェアエンジニア 小倉章嗣氏

カードの中にはブラウザで検索結果を表示する「検索」ボタンの他に、クックパッド、食べログといった関連するアプリのボタンも表示されており、これをタップすると該当アプリでキーワードを検索した結果の画面が直接表示された。

大量のテキストが表示されている状態でも固有名詞などを複数抜き出した検索が行われ、地名や店名の場合には地図を直接開くボタンも表示された。さらにLINEで日付や時間を含んだ会話を行った場合、それを予定としてカレンダーに書き込むカードも表示された。

LINEでの会話画面でホームボタンを長押し

店名をキーワードとして検索した結果がカード表示され、地図や食べログアプリへのリンク等が表示される

「明日15:00」というキーワードからカレンダーへの予定追加も簡単に行える

「Now on Tap」を実現する3つの技術

この動作を実現しているのが、3つの技術だ。1つ目はグーグルが2012年に発表した「ナレッジグラフ」だ。キーワードが示すものが場所か、人か、物かといったことを識別したり、関連情報をひもづる役割を持っている。2つ目は「自然言語処理」だ。人が会話の中で使うような言葉をコンピューターが処理する技術となる。

「Now on Tap」を実現する3つの技術

ナレッジグラフ

自然言語処理

「Now on Tapは、画面上にあるテキストをコピー&ペーストして検索しているようなイメージ」と徳生氏が語ったとおり、画面表示されている範囲のテキストをコピーし、自然言語処理によってキーワードとなるものを抜き出し、ナレッジグラフの力でその言語が何を示しているのかを識別し、適切な検索結果を示すという動きになっている。そのため、現在は画像化されている文字等は検索対象とならず、テキスト情報が存在しないゲーム画面等からも利用できないという。

最後の1つとなる技術が「App Indexing」だ。これはアプリ開発者向けの技術で、アプリ内にディープリンクを行うことができる。これによって、検索結果が食べ物だと判断された場合、クックパッドのようなレシピアプリがあればそのキーワードでアプリ内検索を行った画面を直接表示可能にしている。

App Indexing

検索結果として表示されるアプリは、あらかじめ端末内にインストールされていたもので、App Indexingに対応しているもののみとなる。インストールされていないアプリのインストールを促すようなことは行わない。また「Now on Tap」自体も、初回利用時に有効化するかどうかを尋ねるオプトイン方式で提供される。

あくまでも「グーグルの新機能」

現在「Now on Tap」が利用できるのは、Android 6.0を搭載した端末のみだ。そのため一見するとAndroidの新機能であるかのようにも見えるが、これはあくまでもグーグルの新しい検索機能だという。「今のところAndroid 6.0がもっともよいエクスペリエンスを提供できる」というのが提供プラットフォームが絞られている理由だが、基本的にプラットフォームに強く依存したサービスではないからだ。画面表示されている範囲を認識し、そこからテキストを抽出してグーグルに引き渡すことができるのならば、別のプラットフォームや、過去のAndroid OSでも対応可能となる可能性はあるという。

この機能を提供するにあたって、実際に検索に使われた画面やテキストの情報等は保存されたないが、検索結果に対してユーザーがどのアプリを選択したか等の情報は統計に利用される。これはサービス向上のための統計で、ナレッジグラフの成長等と合わせてサービスの機能向上に役立てられることになる。

実際に利用してみると「パズル&ドラゴンズ」という言葉が含まれた画面から「中日ドラゴンズ」が表示されるなど、まだ未熟さも見えた。英語版でのサービス開始から見ても1カ月強ということで、今後の成長に期待することになる部分も多そうだ。

徳生氏は「非常に野心的な取り組みで、第一歩だと思っています。使っていただくことによってより進化すると思っているので、ぜひ使っていただいた上で暖かい意見をいただき、よりよいプロダクトにして行きたい」と語った。