東北大学(東北大)は11月11日、ラット脳の神経細胞活動のオンオフを近赤外光により制御することに成功したと発表した。

同成果は、同大学大学院 生命科学研究科の八尾寛 教授らの研究グループによるもので、11月10日付けの英オンライン科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

「光遺伝学(オプトジェネティクス)」は、チャネルロドプシンなどの光感受性機能タンパク質を神経細胞に作らせ、光のオンオフで神経細胞の活動をコントロールする技術で、さまざまな神経疾患の治療につながるとして注目されている。光遺伝学において、大半が生体組織で吸収され減衰してしまう可視光に比べ、生体組織による吸収率が低い近赤外光は、生体深部での光操作に理想的であるとされてきたが、近赤外信号を神経細胞に伝える方法はこれまでに報告されていなかった。

今回の研究では、近赤外光エネルギーを吸収し、青、緑、赤などの可視光を発光するランタニドナノ粒子の性質に注目。同粒子をドナーとして近赤外光エネルギーを可視光に変換し、チャネルロドプシンなどの光感受性タンパク質をアクセプターとして神経細胞活動を制御するシステムを考案し、実験的に動作確認することに成功した。具体的には、植物プランクトンの一種であるボルボックスから得られた高感度のチャネルロドプシンを発現したラット大脳皮質ニューロンを、ランタニドナノ粒子の近くに置き、近赤外レーザーを照射したところ、レーザーパルスのオンオフに同期して神経細胞活動電位の発生が制御されたという。

近赤外光を外から照射すると、脳内に投与したランタニドナノ粒子を光らせることができる