留学・語学教育事業を展開するイー・エフ・エデュケーション・ファースト(EF)の日本法人イー・エフ・エデュケーション・ファースト・ジャパンは11月11日、国別英語能力指数レポート「EF English Proficiency Index 2015(以下、EF EPI)」および東京大学との共同研究開始を発表した。
国別英語能力指数レポートの結果は……?
EF EPIは、世界70カ国、個人の成人約91万人の英語学習者が行った無料のオンライン試験とEFの学生のクラス分け試験という2種類の英語試験から計算されたデータもとに作成されたもので、今回で5回目となる。
今回発表されたEF EPI 2015のランキングは下記のとおり。
ランキングでは、昨年3位だったスウェーデンが1位にランクイン。また、ヨーロッパ諸国の英語能力は全体的に高く、アジアやその他の地域に大きな差をつける結果となった。この結果について、EF教育部門常務取締役兼ケンブリッジ大学EF研究チーム責任者のクリストファー・マコーミック氏は「ヨーロッパ諸国の言語が英語に近いためであると思われるかもしれないが、5位のフィンランドは英語とまったく異なる言語なので、単に英語に近いから成績が良いというわけではない。英語の学び方も関係してくるということだ」とコメントした。
日本の順位は、昨年から4位下がって30位という結果になった。過去5年間のスコアの結果を比較すると、ほぼ横ばい(昨年からは+0.69ポイント)になっているという。マコーミック氏はこの結果を受けて「日本において、英語教育の対象は低年齢化してきているが、実際の授業は日本語で行われており、自信をもって英語を喋ることができるような環境ではない。また英語の能力が高いといわれている女性の活用が進んでいないことも原因なのでは」と指摘する。今回、アジア諸国のなかで最もランキングが高かった国は12位のシンガポール。インド、ベトナムといった経済成長国は昨年から大きくスコアのポイントを伸ばした(それぞれ+4.67、+2.24ポイント)。
また日本国内においては、都市部に英語能力の高い人が集中していることも明らかになった。
東京大学との共同研究で脳科学を英語学習へ活かす
またEFは、東京大学大学院総合研究科 酒井邦嘉 教授とともに共同研究を進めると発表した。酒井教授は、人の言語処理の法則性を脳科学として実証する研究に取り組んでおり、これまでに、文法処理に特化すると考えられている左脳の前頭葉の一領域「文法中枢」の活動が、英語習得の初期に高まり、中期にはその活動が維持されるが、文法知識が定着する後期には活動を節約するように変化していることを明らかにしている。
共同研究では、英語を海外で学ぶ日本人EF生と、日本語を日本で学ぶ海外のEF生が対象となる。fMRIを用いて学生たちの脳構造を語学学習に取り組む前後で比較し、第二言語を使用している間の脳機能を調べることで、経験の役割を調査していくという。
「これまでの研究では、英語のテストを自前で行うところからスタートしてきたが、EFはスタンダードとなる試験を持っているため、これを利用することで留学などの経験の後に一人ひとりの脳がどのように変化したか、経験と脳の活動との因果関係がわかるようになる」(酒井教授)
会見の最後にEFジャパン 代表取締役社長 中村淳之介氏は「中学生に英語教育の様子を聞いても、30年前と大きく変わっているという印象は得られない。中学・高校の先生を海外に送って、教育の仕方を学んでもらうという動きも出てきているが、日本の教育の動きを根本的に変えていくということをしていきたい」と同社における英語教育についての今後の展望を語った。