放射線医学総合研究所(放医研)は11月5日、ヘルメット型PET(陽電子断層撮影法:Positron Emission Tomography)の開発に成功したと発表した。
同成果は、放医研とアトックスの研究チームによるもので、11月5日~7日に開催されている第55回日本核医学会学術総会で報告された。
PETは、身体の中の生体分子の動きをそのままの状態で外から見ることができる画像診断法の一種で、特定の放射性同位元素で標識したPET薬剤を検査対象者へ投与し、そこから放射される陽電子に起因するガンマ線を検出することにより、体深部に存在する生体内物質の分布や量、時間変化を測定できる。
これらを測定する従来のPET装置では、感度を上げるため検査対象に測定器を近づけた際、解像度が劣化してしまうという課題があったが、今回の研究では近づけても解像度を維持できる「3次元放射線検出器」の特性を活かし、頭部に最も検出器を近づけられるようにした。具体的には、半球状に検出器を並べた内径25cm、外径50cmのヘルメット部のほかに、あご部にも帽子のあごひものように検出器を追加配置することで、脳の中心部の感度を高めた。性能試験の結果、装置感度は脳中央部でも5%、脳表部では10%と従来装置の約3倍となり、場所によらず均一な3mm以下の解像度が達成できたという。
これにより、認知症の発症前~早期では蓄積量がわずかであると考えられている脳内の原因タンパク質の量や分布を画像化できるほか、検査時間の短縮やPET薬剤の少量化による被ばくの低減が期待される。
今後は、検出器の改良によって1mmに迫る高い解像度を目指すことで、これまでのPET検査では見えなかった、脳深部にある記憶の座である海馬と呼ばれる領域での加齢によるアルツハイマー病の原因とされる異常なタンパク質の蓄積のプロセスや、大脳皮質の層構造や脳幹部などのさまざまな神経細胞の分布などを明らかにしたいとしている。
ヘルメット型PET |