現在、東京都・浜松町の「増上寺」にて、デザインイベント「AnyTokyo 2015」が開催されている。本稿では、プレス内覧会の様子をお届けする。

増上寺の門には同イベントのビジュアルと同色のエントランス装飾が

会場は本殿わきの光摂殿

「AnyTokyo」は、2003年より開催されている催し。増上寺の光摂殿を会場とし、小規模ながらも最先端のプロダクトを展示している。デザイン・アート関連の催しというと青山・六本木エリアが中心となっている印象だが、浜松町、しかも「寺」を会場としているのは目新しい。

会場内の様子

同イベントの実行委員会の担当者によれば、増上寺側が「文化の発信」という観点で、同イベントへの理解を示したことが協業のきっかけになったのだという。増上寺での開催は今回で2度目だが、「口コミがきっかけになるなど、デザインイベントという枠外からも足を運んでくださる方もいる」ということだ。

「wena wrist」

会場では、クラウドファンディングで多額の支援を集めたソニーの腕時計「wena wrist」の展示も。この展示が、一般販売前としては最後の機会となるという。一見すると"ふつう"の腕時計だが、スマートフォンの着信通知や運動量などのログをとる機能、そしてFelica搭載によるおサイフケータイ対応などが可能となっている。展示ブースでは、どの部分に何を搭載しているのかを示したディスプレイも見られた。

針と文字盤のある腕時計のルックスでありながら、内部にさまざまなパーツを内包してスマートフォン連携などの機能を搭載している

映像スタジオ「WOW」のプロダクトプロジェクト「BLUEVOX!」による漆器「SHIZUKU」は、漆だけでかたちづくった器。平滑な面に塗ると剥離しやすい性質を利用し、シリコン型から抜くようにして、塗装してつくる器では難しかった薄さや形状を実現した。

塗装ではないあらたな方法で作り出した漆の器「SHIZUKU」(BLUEVOX!)

廃棄されるTVを素材として再利用した壁面照明「Nebbia Interactive Light」(nbt.STUDIO)

ミリタリー用品から発想を得た折りたたみテーブル「Bipod Table」(Dai Sugasawa)

吸水性の高いプラスチックを"染色"してデザインした家具のプロトタイプ「Dye It Yourself」(TAKT PROJECT Design Firm)

そのほか、トヨタIT開発センターと慶應義塾大学脇田研究室が共同開発中の運転インタフェース「FINA」のプロトタイプも、エントランス付近に実車(プリウス)と併せて展示されていた。

車の運転をする際には、走行時のスピードや障害物を確認するため、前方から少し目をそらす必要がある。腕にそれらの情報をプロジェクションマッピングすることで、その状況を解決しようというのがこのプロジェクトだ。前を向いたまま、周囲の状況や現在の速度など、「クルマが感じているであろう環境情報」を読み取ることができるよう設計されている。居眠り運転の防止を目的とした投影パターンも用意されていた。

スピードを表す線形の投影。違反スピードに達すると、線が赤くなって警告する

なお、「AnyTokyo」の入場料は無料。「デザイン関係者だけでなく、さまざまな方がデザインと接点を自然ともてる機会になるよう、間口は広くしていきたい」(担当者)という。歴史ある寺と最先端のデザインが融合する空間には、このほかにもさまざまな展示があるので、興味を持った人は足を運んでみてほしい。会期は11月3日まで。

会場から出て「FINA」展示エリアの先、両脇にある階段をのぼると、エマニュエル・ムホー(emmanuelle moureaux)による作品「1坪の100色」が展示されている。非常に細い紙の短冊の集合体で、風になびくと多彩な表情を見せる。真下に畳が置かれ、寝転んで色の集合を見ることができる