京都大学(京大)は10月20日、パナソニック AVCネットワークスと共同でプロジェクションマッピング技術を用いて、手術の際の目印をリアルタイムでずれなく投影可能な「可視光投影装置(Medical Imaging Projection System:MIPS)」を開発したと発表した。
肝切除では、不要な出血を予防し、残すべき肝機能を温存することを目的に、安全かつ正確に実施されることが求められているが、肝実質内部には切離の目印がないため、肝切除の術前3Dシミュレーションや近赤外光で蛍光を発する色素「インドシアニングリーン(ICG)」を用いた蛍光ナビゲーション手術の開発などが進められている。中でもICGを用いた蛍光ナビゲーション手術は、乳がんの手術のセンチネルリンパ節の同定に一般的に用いられるなど期待の技術ではあるものの、赤外線カメラで撮影した映像をモニタ上で観察する必要があるほか、観察時は無影灯を消して暗い術野の中で手術を行う必要があるといった課題があった。
同システムは、プロジェクションマッピング技術を応用することで、カメラでICG画像を撮影し、その画像を患者の臓器に直接ずれなく投影するというもの。臓器が動いたり、変形しても、リアルタイムでの追従が可能であり、かつ使用しているプロジェクターは近赤外線を出さないため、ICG撮影に影響することもないという。すでに同大 医学部附属病院にて2014年9月より臨床試験が進められており、肝切除において、視線移動が不要になるほか、明るい術野での手術の実施、真のリアルタイムナビゲーション、ICGが肝腫瘍に取り込まれる性質を活用した術前・術中に認識できない微小な腫瘍の検出などの効果が期待されているという。
なお研究グループでは、肝切除だけでなく、乳がんに対するセンチネルリンパ節生検、肺腫瘍に対する肺切除/肺移植といったさまざまな外科手術に応用が可能との考えを示しており、今後もさらなる外科医がストレスを感じることなく、患者に安全で正確かつ短時間の手術を提供することを目指した開発を進めていくとしている。