京都大学(京大)は10月22日、新生児の名前の経時的な変化を分析することで、日本文化は個性をより重視する個人主義文化に徐々に変容しつつあることが実証的に示されたと発表した。
同成果は、同大の荻原祐二 教育学研究科研究員、内田由紀子 こころの未来研究センター特定准教授らによるもの。詳細はスイス心理学系ジャーナル「Frontiers in Psychology」(電子版)に掲載された。
同研究では、ベネッセコーポレーションおよび明治安田生命保険が公開している新生児の名前ランキングを2004年から2013年にかけて調査。具体的には、人気のある名前の読みと漢字が与えられる割合の推移を算出したという。
その結果、人気のある読みトップ10を与えられた新生児の割合は、経時的に減少していた一方、人気のある漢字トップ10を与えられた新生児の割合は、経時的に増加していることが確認されたほか、人気のある漢字の組み合わせトップ10において、読みが複数ある場合の割合の推移を調べたところ、同じ漢字の組み合わせに対して複数の読みが与えられる傾向は経時的に増加していることが確認されたという。
これらの結果、研究チームでは、例えば、「海」を「かい」や「うみ」ではなく「まりん」と読むような英語読みや、「心」を「こころ」ではなく、「ここ」や「こ」と読むといった、人気の漢字に対して一般的でない読みを与えることで個性的な名前を与える傾向が増加していることが示されたとしており、日本文化が個性をより重視する個人主義文化に徐々に変容していることを示唆するものだと説明している。
なお研究チームでは、今後、なぜ個性的な名前を与えようとする傾向が増加しているのか、そして個性的な名前を与えられることが変容する社会の中でどのような帰結を生み出しているのかなどの検証を行っていく必要があるとコメントしている。