物質・材料研究機構生体機能材料ユニットの研究チームが、正常血圧の2.8倍の耐圧強度を持つ生体用接着剤を開発した、と発表した。血管を主な対象とする生体用接着剤は心臓血管外科のほか、多くの外科手術の術中術後の出血を防ぐために極めて重要。耐圧性に優れた新接着剤の外科手術での活用が期待される。
外科治療の際に血管の傷をふさぐ措置などに使われる接着剤として、これまでは血液成分を原料とする「フィブリン接着剤」が主に使われていたが、研究チームによると、この種の接着剤の強度は正常血圧より低く、不十分だった。
研究チームは、ブタの体内ゼラチンに「疎水基」(水分となじみにくい原子のかたまり)を混合させて血管組織の接着性や浸透性が向上した接着剤をこれまでに開発していた。しかし、ブタのゼラチンは、低温、高濃度になるとゼリー状になるため、外科医が使用する前に温水等で加温して溶かす必要があった。今回研究チームは、タラからとれるゼラチンが低温、高濃度でも流動性が保てることに着目し、このゼラチンに、組織接着性が高いとされる疎水基(コレステリル基)を利用するなどの工夫をして新しい接着剤を開発した。
ブタの動物実験では、これまでのフィブリン接着剤の12倍、人間に換算して正常最大血圧値の2.8倍に耐える強度を示した、という。
研究チームは、今後筑波大学臨床医学系呼吸器外科と共同で臨床応用のためのデータを集め、心臓血管外科をはじめとした外科医療現場での活用を目指す。
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