「SanDiskが取引銀行を通して事業の売却先を探しており、Micron TechnologyとWestern Digitalが買収したい意向を示している」と、SanDiskの地元の日刊紙「San Jose Mercury News」はじめ多数の米国メディアが米国経済通信社Bloombergの情報として先週伝えた。

報道によると、SanDiskはすでに MicronおよびWestern Digitalと売却交渉を始めているが、交渉が最終的に成立するかどうかは不明としている。SanDiskとWestern Digitalはともにこの件に関してはコメントをさけている。Micronは「(先の中国勢によるMicron買収申し入れの際と同様に)噂にはコメントしない(のが当社の方針である)」とコメントしている。なお、SanDiskの時価総額は、およそ126億ドルである。

SanDiskは、現在、東芝と長期契約を結び、NAND型フラッシュメモリの共同開発・共同製造を行い、東芝四日市工場の設備投資の5割を負担しているので、「同社の売却に関してはおそらく東芝の了解(blessing for the deal)を得る必要があるだろう」と匿名の関係者は語っている。

もしもSanDiskが東芝のライバルメーカーへ売却されるような事態になったら、利益のほとんどをNAND型フラッシュメモリに依存している東芝の半導体事業に大打撃をあたえることになろう。

シリコンバレーでは、2015年に入り、半導体メーカーの大型買収や合併が相次いでおり、今回のSanDiskの売却話も、その流れに沿うものとして地元では受け取られている。

著者注

SanDisk買収に中国勢の影

Micron Technologyに230億ドルで買収を持ちかけている中国の紫光集団(清華大学傘下の国営企業)は、2015年9月、Western Digitalにおよそ38億ドル出資し、同社の株式の15%を取得している。今回のSanDisk売却検討のニュースに、Micron、Western Digitalという清華紫光集団に目を付けられた2社が登場しているのはまったくの偶然ではなかろう。

清華紫光集団は、MicronのDRAM事業だけではなく、SanDiskのNAND型フラッシュメモリ事業も入手するため、MicronとWestern Digitalに働きかけてSanDiskの買収を狙っているのではないかという噂が一部に流れている。Micron、Western Digital、SanDiskが合併し(あるいは買収により)中国の清華紫光集団傘下にはいる可能性も出てきた。同集団はDRAM・NAND型フラッシュメモリの両事業も手に入れて、世界有数の総合メモリメーカーを目指しているのではなかろうか。

一方、台湾では、Micronが一部出資している台湾最王手DRAMメーカー南亜科技の高啓全総経理が密かに辞任していたことが明らかになった。中国紫光集団に引き抜かれた(あるいは引き抜かれる)のではないかとの憶測が飛び交っている。紫光集団は高氏にMicronへの仲介や説得を期待しているようだ。同集団は、米国政府の反対をかわすために、今後さまざまな巧みな戦術を立ててくるだろう。中国勢の海外半導体企業"爆買"はますますエスカレートしそうな気配だ。