大日本印刷(以下、DNP)は10月15日、美術鑑賞システムを活用したワークショップの取り組みにおいて、公益社団法人企業メセナ協議会が主宰する「メセナアワード2015」の大賞を受賞した。今回の受賞は、1996年のメセナ普及賞、2005年のアート情報文化賞の受賞に続くもので、大賞の受賞は初となる。

同社は、2006年よりルーヴル美術館と共同で、デジタル技術の活用などによって新たな美術鑑賞の手法を開発するプロジェクト「ルーヴル - DNPミュージアムラボ」を推進。同プロジェクトを通じて、ルーヴル美術館の作品や展覧会のテーマに合わせた独自の美術鑑賞システムを開発し、そのうちのいくつかはルーヴル美術館本館などに導入されている。

「開発した鑑賞ワークショップアプリ」

このたび開発した「鑑賞ワークショップアプリ」は、作品比較ワークショップアプリと、AR(Augumented Reality)ワークショップアプリ」からなる。

「作品比較ワークショップアプリ」は、タブレット端末に内蔵した複数の作品画像を使い、細部を拡大して観察したり、作品相互の相対的な大きさを比較したりすることができる。参加者は、画面上に自分の気づきを自由に書き込み、他の参加者とネットワーク機能を介し共有することが可能だ。

一方「ARワークショップアプリ」は、美術作品の画像を、タブレット端末のカメラでとらえた実際の風景に合成し、写真にとることができるというもの。識別用のARマーカーが印刷されたパネルをタブレット端末で撮影すると、マーカーの画像が、あらかじめ選択した美術作品の画像と入れ替わって表示される。

作品は、その場所に置かれた場合の実物大サイズで表示されるため、空間と美術作品、見る人と美術作品の対比や関係性を考えるシナリオとして展開。目の前の風景の中に美術作品が出現する楽しさから、美術にあまり馴染みのない人々に、美術そのものへの関心を向けさせることもできる。

また、同社は、その経験や知見を活かし、2015年7月にフランス国立図書館が所蔵する地球儀・天球儀を3Dデジタル化することでさまざまな形で閲覧を可能にするプロジェクトを開始している。