2015年9月のグーグル急上昇ランキングは、7月・8月に続いて台風関連のワードが高い位置にランクインした。台風の接近数そのものは例年と比べて多いわけではなかったが、9月9日に東海地方に上陸した台風18号は温帯低気圧に変わった後に関東地方北部に豪雨をもたらし、大きな被害を与えた。「吹石一恵」「国分太一」など芸能人の結婚も相次いで報じられた月だった。
早期発見が第一、ですが……
ランキングのトップとなったのは9月24日に胆管がんで亡くなった「川島なお美」。まだ54歳と、亡くなるには早すぎる年齢だった。川島さんだけでなく、フリーアナウンサーの黒木奈々さん、任天堂の岩田聡社長、俳優の今井雅之さんなど、今年は若くしてがんで亡くなる著名人の訃報が続いている印象がある。亡くなる直前まで仕事に向き合い、病気と闘った方々に、改めて哀悼の意を捧げたい。
国立がん研究センターがん対策情報センターの資料によると、男女ともがんの罹患数は1985年以降増加し続けている。当然、高齢化による偏りはあるが、その影響を取り除いた「年齢調整罹患率」を見ても、1985年以降罹患率が少しずつ上昇していることが分かる。一方で、患者の生存率は上昇傾向にある。「がんは治る病気」と言われるようになったのはこのためだ。
筆者の身内の例で恐縮だが、胃がんにより全摘手術を行い、術後2年で亡くなった者と7年経過して健在の者がいる。がんが見つかった時、前者はステージIVの進行がん、後者はステージIの早期がんだった。「治る病期」にするためには早期発見が最重要だ。ただし、7年経過しても元どおりの身体になるわけではない。仕事や生活では周囲が協力したり、折り合いをつけたりすることが欠かせない。患者の生存率が今後も上昇するにつれ、「治る=治療後の対策が必要な病気」という側面は重くなっていくだろう。
荒くれ者ではありません
4位「ラグビー」は、現在開催中のラグビーワールドカップにおいて日本が南アフリカに歴史的な勝利を収めたことで注目された。あえて勝ちを狙ってトライを取りにいき逆転勝利したことが観客の感動を呼び、地元メディアでも"Brave Blossoms"と賞賛されたそうだ。
ラグビーの国際統括機関「ワールドラグビー」では、「本人が当該国生まれ」「両親か祖父母の1人が当該国生まれ」「本人が3年以上継続して当該国に住んでいる」という3条件のいずれかを満たせば代表資格があるとしているため、日本代表にも外国籍の選手が所属している(ただし、他国での代表歴がある場合はNG)。試合中は素人には取っ組み合いにも見える激しいプレーが続くが、試合終了後は「ノーサイド」という言葉通り敵味方の区別なく健闘をたたえ合う紳士のスポーツだ。
こうしたルールや文化的な部分も含め、よく理解するために試合結果以外の情報にもこの機会に接しておきたい。2019年には、この熱戦が日本で開催されるのだ。
アップデートはお済みですか?
米Appleは9月16日(現地時間)、iOS 9の提供を開始した。Appleファンにとっては毎年恒例のお祭りといったところだが、一体どれくらいの人がこの祭りに参加しているのだろうか。同社は21日、「iOS 9のアップデートペースが過去最高」であると発表。「App Storeの統計で9月19日にiOSデバイスの50%を超えた」という。
しかし、これは9月19日にApp StoreにアクセスしたiPhoneユーザーに限った数字だ。OSのアップデートに伴うアプリのアップデートがバイアス要因になっていることは想像に難くない。ということで、マイナビニュースのスマートフォン向け最適化サイトへのOS別シェアを調べてみた。
これは9月全体の数字なので、日本時間の9月17日以降にしか使用されないiOS 9が少ないのは当然だ。だがそれを差し引いても50%と考えるには無理がありそうだ。ここで注目したいのが、37.8%と最多を占める8.4.1の存在。8月中旬にリリースされた8.4.1がインストールされている端末は、こまめにアップデートに応じている層と考えられる。ということは、iOS 9へも順次移行する可能性が高いのではないか。結果的にはAppleが言う通り半数近くを占める形になるのかもしれない。
逆に、7.x.xや8.1.xの端末は今後もそのままである可能性が高いだろう。そこには新OSで動作が重くなることを嫌い、あえて避けているケースと、アップデートする習慣がないユーザー層の存在が読みとれる。iPhone誕生から8年。古いOSへの対応が課題になるにはまだ早い気がするが、端末商売は否応なく過去を置き去りにしていく。
番外 : ランキングに「ない」ものを考える
国会議事堂前に大勢の人が集まり、大規模なデモが何度となく行われた9月。「安保法案」「憲法9条」といった言葉は、しかしこのランキングには入らなかった。検索ではなくSNSを通じて情報が拡散し、行動が拡大していったことが読み取れる。検索するまでもなく、ニュースで常にそれらの言葉を目にしていたこともあるだろう。
しかし、SNSやニュースで目にしたその先の情報を自発的に調べる割合が、ランキングに入るほど多くはなかったとも受け取れる。共有し行動することはネット時代に一般人が持つ大きなパワーとなり得る。だがその間に「調べる・知る」というステップを挟むことは、信条・信念を訴える土台としても重要なはずだ。
大きな反対の声にも関わらず安保関連法案はまとめて可決される形となった。次に我々がするべきは、これらの法律に基づき何が行われるか、常に情報を読み解いて見極めていくことだ。