10月7日、幕張メッセで「CEATEC 2015」が開幕した。NEXTイノベーションエリアとキーテクノロジーステージ、ライフ&ソサエティステージの3つのエリアで各企業・団体が最新技術・製品を展開。情報処理推進機構(IPA)のブースにおいてスケルトニクスは動作拡大型スーツ「スケルトニクス・アライブ」のデモンストレーションと代表取締役CEOの白久レイエス樹氏がスピーチを行った。
同スーツは高さ2.8m、重さ40kgで第5世代目となり、ほとんど電力を使わずに人が手や足を動かすことで作動し、指の動きはモーターを使用しているが、そのほかの動きには使用していない。基本的な動作は第1世代目から可能としていたがパイロットの負担が大きく、稼働時間は5分程度だった。
しかし、2013年度にIPAの未踏IT人材発掘・育成事業(未踏事業)の採択を受け、構造を見直すとともにパイロットの付加を軽減。平行リンクを駆使した特殊な3次元の閉リンク構造を用いることで、人体とロボット間の同期を行う機械式マスタレーブを使用し、最大70分の稼動を実現した。
まだ試験的な段階というものの、2015年2月にはドバイで開催された「Government Summit 2015」などに出展している。現在は新たに高さ2.6m、重さ400kgの重量級パワードスーツ「ギア」を開発しているが、同スーツはスケルトニクスとは違い、全身にアクチュエーターやモーターを用いなければならないため費用負担が大きいのが実情だ。
白久氏は「ギアの開発には多額の費用が発生するが、資金調達が困難なため現行のスケルトニクスを事業化することで収益確保ができるのではないかと考えた。大きな市場は見込めないが短期的に収益確保が可能なイベント派遣などのライブパフォーマンス分野にスケルトニクスを投入し、認知向上を図ることで資金調達を行い、ギアの開発に取り組んでいる」と語った。
現在は各地におけるイベントでのデモンストレーションに加え、長崎県のハウステンボスやアラブ首長国連邦ドバイ首長国首相オフィスなどにスケルトニクスを売却し、収益を確保しているという。
また、同氏は今後パワードスーツがどのように社会へ浸透していくかについて「これまでのスケルトニクスやギアの開発の観点から、建築や土木、物流、介護ロボットなど特に社会的に注目されている分野では技術的なハードルが高いように感じた。また、実際にビジネスとして成立させるためには、すでに流通している産業機械などと同等以上のコストパフォーマンスを確立しなければならない。しかし、高い要求性能やコストパフォーマンスを達成する以前に、必ずしも必要とされず、既存製品との比較対象がない分野からパワードスーツが広まっていくのではないか」と主張した。
さらに同氏は「スケルトニクスはライブパフォーマンスなど機能性とは別の存在意義があり、パワードスーツが社会に浸透していけば理解が広まり、適切な要求仕様や納得できるコストが定義されると同時に技術的な進歩を達成することで、将来的に期待されている建築、土木、介護分野へパワードスーツの浸透が加速的に広まっていく未来を想像している。開発中のギアはどのような分野へ投入するかは決定していないが、まずは完成させることで技術的なボトルネックを直視し、一過性で終わらないビジネスを展開するべく、慎重に次のビジネスを展開したい」と述べた。
現在、ギアの開発状況は1年間で上半身2回、下半身3回のプロトタイピングを実施し、すでに使用するアクチュエーターやパワーソース、構造物など最終仕様が決まりつつあり、2016年中に公開を予定している。これまでライブパフォーマンス分野やロボット販売などで収益を確保するスモールビジネスの経営展開を進めているが、ギアの完成以降はスタートアップ路線への変更や共同研究なども柔軟に検討していく方針だ。