総務省は9月29日、ICTを利活用した地方創生に向けて「ふるさとテレワーク推進会議(第1回)」を開催した。同会議は総務省の「ふるさとテレワーク地域実証事業」に採択された15地域の実証団体の代表者に加え、構成員15人が参加し、各実証団体が実証内容について説明した。
同会議の開催にあたり高市早苗総務大臣は「今回の地域・団体の取り組みが成果を挙げて地域創生の手本になることを期待している。そして、ふるさとテレワークの未来を祈念している」と挨拶した。総務省では地方で働き、学び、安心して暮らせる環境をICTの利活用によって実現し、地方への人の流れを生み出すことにより、地方を創生することが重要という。
このような環境を実現するためには、すべての地域でICTの恩恵を受けられるような光ファイバーなどの情報通信基盤を山間地といった地域でも格差なく整備し、テレワークや遠隔教育などの技術を活用することで雇用や人材を引き出すとともに観光地などでのWi-Fi整備により地方の魅力や観光資源を積極的に国内外へ発信することを通じて地方における定住・移住や地方への訪問者を増やしていくことが効果的としている。
そのような問題意識を念頭に同省では2014年10月に「地方のポテンシャルを引き出すテレワークやWi-Fiなどの活用に関する研究会」を設置。地域活性化に大きな成果を挙げている具体事例を踏まえつつ、地方へ人の流れを作るためのテレワークやWi-Fiなどの活用のあり方について推進策などを検討していた。
同年12月には同研究会の中間とりまとめにおいて、都市部から地方への人と仕事の動きを伴う「ふるさとテレワーク」の提言を受けた。同テレワークは「週1~2日と限られた人が限られた期間のみ行う」という従来のテレワークの限定的な利用から、仕事が地方でも可能とし、東京の仕事をそのまま地方で続けられるという、テレワーク本来の特性を最大限引き出すものであり、地方への人と仕事の誘致というパラダイムシフトを実現し、地方創生の先行的実施という観点からも重要だという。
ふるさとテレワーク地域実証事業に採択された15地域の実証団体のうち、会津若松スマートシティ推進協議会の会員企業で本田屋本店が代表を務めるマッチングシステムによる高付加価値業務のテレワーク化事業は都市圏の企業が本社から切り出した高付加価値業務をテレワークによって検証する。
本社業務と最適なマッチング、移住者が地方で感じる不安や不便を解決するクラウドサービス、テレワーク導入が企業・テレワーカー・地域に及ぼす効果を検証の観点とし、「やりがいのある仕事」と「人材」を地方都市へ移管・定着させることで地方都市が抱える人口減少の課題解決に寄与していく。
同事業に参画しているアクセンチュアの中村彰二郎氏は「東京でやる必然性のない高付加価値業務としてはデータ分析が大きな作業ではないか。また、移住者のための情報提供が乏しいため、マッチングシステムと生活情報支援サービスなどを立ち上げて移住者を増やしていきたい」と述べた。
また、奈良県東吉野村が代表を務める奈良県東吉野村「ふるさとテレワーク」推進事業は人口減少が急速に進む同村において「仕事や地域のコミュニティの場」として改装された自然に囲まれた古民家を活用し、オフィスキャンプ東吉野を設置。ふるさとテレワークの拠点として「企業と地域の共創」モデルを実証する。
加えて「都市部の仕事が可能なテレワーク環境」の本格実証に加え、長期派遣や移住が可能になった過疎地域において「企業」と「地域」がともに活動してこそ創出できる効果(地場産品の開発/発信・社内グローカル人材の育成・遠隔採用の可能性)なども検証。
オフィス東吉野の坂本大祐氏は「先進性と汎用性の2つのテレワークシステムを導入する。先進性では沖電気工業のテレワークシステムを導入し、これまでクリエーターが中心だったオフィスキャンプ東吉野に違う職種の人々を受け入れる実証に取り組みたい。さらに、汎用性では一般的に市場の製品を導入し、働ける人に働いてもらうほか、東吉野村の居住者や移住者を対象とした料理教室などでICTを活用できないかと考えている。これらの取り組みにより、定住の促進につながれば望ましい」と語った。