物質・材料研究機構(NIMS)、京セラ、大阪大学、日本電気(NEC)、住友精化、NanoWorld AGの6者は9月29日、超小型センサー素子「MSS(Membrane-type Surface stress Sensor)」を用いたニオイ分析センサーシステムの実用化・普及のための業界標準を目指す「MSSアライアンス」を発足したと発表した。
MSSはNIMSの吉川元起氏が2011年に開発したもので、表面の感応膜に分子が吸着したときに生じる電気抵抗の変化を計測することで対象の分子を検知することができる。感応膜次第でガス分子に対してppm以上、生体分子に対してnM以上の高感度を実現できるほか、1チャネルが1mm2以下と小型であることが特徴。シリコン製のため製造コストが低く抑えられること、有機・無機・バイオ系などさまざまな種類のガスに対応可能であること、条件次第で応答時間1秒以下のリアルタイム計測が可能となるなどさまざまなメリットを持つ。
すでに研究では、肉の種類の判別や呼気によるがん患者の識別などで効果が実証されているが、実用的なシステムとするには計測モジュールやデータ解析技術の開発など、センサー以外の分野での技術開発が必要となる。これらの課題をNIMS単体でクリアすることは難しいため、課題となる分野で先進的な技術を持つ企業・大学とアライアンスを結成することで実用化を推進する。
スマートフォンと連携したデバイスでの呼気チェックによる健康管理システムの開発を進めるなど、ヘルスケア/医療分野での活用を見込んでいるほか、香水のフレグランス管理、食材の鮮度管理など幅広い業界に対し可能性を見出しており、MSSの開発者である吉川氏は「2年後までに何らかのかたちで製品化したい」としており、1チップ100円程度での提供を目指すとした。