NECは9月24日、工業製品・部品の表面に自然発生する微細な紋様をもとに固体識別・真贋判定が可能な「物体指紋認証技術」を強化し、樹脂など多様な材質の工業製品・部品の認識に対応したと発表した。
物体指紋認証技術は人間の目では判別が困難な製品固有の紋様をスマートフォンなど汎用カメラで撮影し、事前登録した画像と商号することで製品の真贋を瞬時かつ高精度に識別する同社独自の技術。
近年、企業における製造・流通のグローバル化に伴い、商品の適切な管理・品質保証などがブランドの維持向上に対して重要となっている。ブランドに関しては特に偽造品が年々増加し、正規メーカーや流通業者の金銭的損害だけでなく、日用品から安全装備品などにまで広がり、場合によっては人命に関わる事故を招く危険性も指摘されるなど消費者が受ける被害も深刻化している。
しかし、ブランドを保障するため大量にある製品にタグや特殊加工を施すには膨大なコストと時間を要するほか、正規商品の識別には専用の装置や専門家の人手も必要となっている。偽造品を製造・流通などの段階で未然に阻止するには国内外の流通市場全体を監視する必要もあるが、必要な装置や人的リソース・コスト面などから、個々の企業で対策を行うには限界があったという。
同社の情報・メディアプロセッシング研究所 所長の山片茂樹氏は「近年、偽造品は世界中のいたる所で製造されている。その真贋の判定には高い技術が必要であり、特殊な装置や専門家が不可欠となっている。多くの偽造品が出回っているが、それがいかにどのように流通しているかということは把握できていないため、対策が打たれていない。このような状況に対して我々の画像処理技術、スマートフォンなどを使用した技術を活用し、新たなソリューションを提供したいと考えている」と語った。
今回、同社では物体の表面における光沢の強度や模様の濃淡の有無など多様な対象物の材質・表面特性の違いに合わせて識別性の高い特徴を抽出し、汎用カメラ(スマートフォンなど)で物体指紋の画像の撮影が可能な技術を開発。これまで、一般のカメラでは鮮明な画像として撮影できなかった金属以外の物体指紋に対し、安定した認証が行えるようになった。
また、認証を行う場所による違いに対しても安定した認識が可能な特徴照合アルゴリズムを開発し、従来は物体指紋の撮影に必要としていたカメラに取り付けるアタッチメントを使用しにくい対象物でも認識が可能となった。
一連の技術により材質やデザイン、形状に合わせて従来の金属製品に限らず多様な商品から物体指紋を取得・認証し、登録済み正規製品の真贋判定ができる。さらに、真贋判定用の特殊なタグや加工なしで製品の判定が可能となり、低コストかつ効率的な偽造品対策・ブランド保護を実現するという。
同社の情報・メディアプロセッシング研究所 部長の宮野博義氏は「これまでは金属のみの紋様の照合はできていたが、プラスチックなどは光沢に特徴があったため従来照合できていなかった。しかし、今回の強化技術では光沢特徴を捉えることで照合が可能となったほか、塗装・繊維などの製品では影特徴を捉えることで対応ができるようになった」と述べた。
今後、同社は様々な業界で行われている偽造品対策活動と連携するとともに、ブランド品に限らず、日常生活に関わる安全装備品や日用品、医療・健康分野の商品など適用先を拡大していく方針だ。