IDC Japanは9月16日に、国内インクジェットプリンタおよびMFP市場に関する2015年第2四半期(4~6月期)の実績を発表した。発表によると、インクジェット製品の総出荷台数は、前年同期比1.9%減の95万9,000台となった。前年同期比ではわずかに減少したが、出荷台数の大幅減となった2015年第1四半期(1~3月期)の87万9,000台からは9.0%の増加となった。また、インクジェット製品に占めるインクジェットMFP(複合機)の比率は85.2%と、前年同期比でほとんど変化は無かった。
2015年第2四半期におけるインクジェット製品の総出荷台数の内訳は、インクジェットプリンタが前年同期比1.0%減の14万2,000台、インクジェットMFPが前年同期比2.0%減の81万7,000台だった。市場が長期的な縮小傾向にある中で、メーカー各社が行った販売促進策が一定の効果を上げた一方、消費者のインクジェット製品に対する購買意欲が回復したとまでは言えず、見極めにはまだ時間が必要だと同社は見ている。また同社は、2014年末から市場に滞留していた大手メーカーの流通在庫は、2015年第2四半期には流れが正常化したとしている。
メーカー別の出荷台数シェアでは、1位がキヤノン(42.2%)、ほぼ同率でエプソン(42.0%)、3位がブラザー(13.2%)、4位がHP(1.8%)となった。これら4社の合計で、国内インクジェット製品市場全体の99.2%を占める。キヤノンとブラザーが出荷台数を大きく伸ばした一方、エプソンはやや減少、HPはMFPの不振が響き出荷台数を大きく落とす結果になったという。IDCでは、特にキヤノンとブラザーの2社において、キャッシュバックキャンペーンによる台数の上乗せ効果が大きかったと推測している。
同社はさらに、過去のインクジェット製品の平均販売価格の傾向を分析した結果、2012年第1四半期以降、インクジェットプリンタはおよそ2万円から4万円の間で四半期ごとの変動幅が大きい一方、インクジェットMFPは1万5千円前後でほぼ横ばいで推移していることがわかったという。
このうち、インクジェットプリンタは第3四半期に新製品が発売されると、年賀状シーズンの第4四半期に底値を付け、翌年の第1四半期に値を戻し、第2四半期に再び値を下げる季節変動を繰り返しているとのこと。一方、インクジェットMFPには季節と連動した大きな値動きは見られず、年間を通じた低価格販売が定着した状況であると同社は見ている。こうした背景について同社は、インクジェット製品の機能が成熟し、消費者もメーカーも価格面以外の大きな差別化ポイントを見いだしにくくなったことがあるとしている。加えて、近年は大手メーカーが出荷台数確保の一策として、キャッシュバックキャンペーンを積極的に活用する動きも見られるとのことだ。
同社のイメージング、プリンティング&ドキュメントソリューション マーケットアナリストの菊池敦氏は「キャッシュバックキャンペーンには、確かに一定の効果がある。しかし、本体売上が圧縮された結果、仮に消耗品へのコスト転嫁が進むようであれば、かえって消費者の反発を招きかねない。メーカーは、高額でも需要が見込めるインクジェット製品市場の開拓や、新たなビジネスモデルの開発といった、価格面以外の施策にもこれまで以上に力を入れるべきである」と指摘している。