岡山大学は9月17日、眼領域におけるIgG4関連疾患とがんの関連性をサイトカインレベルで解明したと発表した。
同成果は同大学大学院保健学研究科の佐藤康晴 准教授、大野京太郎氏、同大学院医歯薬学総合研究科の吉野正 教授らの研究グループによるもので、8月27日に英科学誌「Scientific Reports」に掲載された。
IgG4関連疾患は涙腺、唾液腺、リンパ節、膵臓、胆管、後腹膜など全身のさまざまな臓器に腫瘤をつくる良性の病変で、腫瘤には免疫グロブリンの一種であるIgG4を産生する細胞(IgG4陽性細胞)が異常に増加し、血液中のIgG4濃度も上昇することが特徴となっている。これまで、統計学的にIgG4関連疾患の患者は悪性腫瘍の発生率が高いということが報告されているが、その関連性の真偽については確認されていなかった。
今回の研究では、眼領域に発症したIgG4関連疾患(IgG4-RD)、IgG4陽性細胞を多数伴う悪性リンパ腫(IgG4(+)MZL)、IgG4陽性細胞のない悪性リンパ腫(IgG4(-)MZL)の3群を用いて、各病変部におけるサイトカインのmRNAを解析した。その結果、IgG4関連疾患とIgG4陽性細胞を多数伴う悪性リンパ腫では、各種サイトカインmRNAの発現が統計学的に同じパターンであり、IgG4陽性細胞を持たない悪性リンパ腫とは異なっていることがわかった。この結果から、IgG4陽性細胞を多数伴う悪性リンパ腫は、IgG4関連疾患を背景にがんが発生している可能性が強く示唆された。
同研究グループは「眼領域IgG4関連疾患と悪性腫瘍に密接な関連性が示唆されたことで、今後、さらに各臓器におけるIgG4関連疾患と悪性腫瘍との関連性の研究が進み、さらにはIgG4関連疾患における悪性腫瘍の発生メカニズムの解明への糸口になり得る可能性も考えられます。」とコメントしている。